第74話 死の支配者《オーバーロード》

 松本隊の

 海斗・諸星  空斗・諸星は双子の兄弟である。


 二人には3つ上の小学生の兄、陸斗がいた。

 陸斗はお兄ちゃんぶって弟たちに薫陶を与える。

 「おい、海斗、空斗、幼稚舎のゲームには注意しろ、ゲームで死んだら本当に死ぬんだ、色んな意味で。」


 5歳の二人にはよくわからなかったし、あまり深くも考えず、聞き流し、大半を忘れていた。


 二人とも食いしん坊で、美味しいものを食べることに忙しかったからだ。


 「母さん!お腹減ったよ、おやつ!おやつ!」

 「はいはい、飲み物はホットミルクでいいかしら?」


 「まったく、おまえらはおやつのことしか頭にないんだな。」


 そんな兄の言葉も耳に入ってない様子だった。



****


 英語の授業が終わったけど、今日はアグネス先生が引き続き担当する。


 「ハーイ二時限目デスゲームノジカンダヨー」


 海斗と空斗は顔を見合わせて「デスゲームって言った」「デスゲームって言ってたな。」


 海斗が手を挙げてアグネス先生に質問する。


 「ハイッ!アグネス先生!ゲームで死んだら本当に死ぬってホンマですか?」


 「ヤダナア、ソンナワケナイヨ〜、知ランケド。」



 海斗と空斗は顔を見合わせて


 「知らんけどと言った」「知らんけどと言ったな」


 「おいみんな、うちの兄ちゃんが言ってたけど、このデスゲームで死んだら本当に死ぬらしいぜ。」


 この風聞はあっという間に120名に伝播し、全員を恐怖に陥れる。


 アグネス先生が続ける。


 「イマカラ始マルゲームで勝チ残ッタ10人ニハ後日、タコゲーム、ニ参加シテモラウヨ、ガンバツテネー。」


 「タコゲーム!」


 声を上げたのはエマ・藤原さんだった。

 彼女はちょうど前日にネットでアメリカの映画「タコゲーム」を見てしまっていた。


 恐怖感もあるが、なぜか高揚感も感じている自分に驚いていた。


 アグネス先生は続ける。


 「ミナサーン、地下ニ移動シテクダサーイ。」


 120名の小さな戦士たちは幼稚舎の階段を降り、棺桶のように並ぶカプセルに入るように促される。


 渋谷園長が確認する。


 「アグネス先生、戦士園児は全員点呼終わったかしら?」


「イエス!ボス、一人モ欠ケルコトナクカプセルニインシマシタ。」


「よろしい、では指導要領通りにゲームを始めましょうか。」


 渋谷園長は銀色に輝くアルミ眼帯をいじりながら呟く。


 「この棺桶みたいなカプセルのデザイン、何とかならないのかしら。」

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