第38話 なんの成果も……

 結局人数も増えないまま定められた時間が訪れる。

 同時にこの地下室――いや、広大な地下空間に新たに入ってくるものが三――いや……四人?

 局長――北野奏きたのかなで

 副局長――藤堂傑とうどうすぐる

 本部からの増援――志藤凛しどうりん

 ? そしてあれはっ!? あの凄まじい恵体はっ! 二メートルに届きそうな身長と、すーぱームキムキボディを併せ持つ長野支部最強の乙女! フロイライン・刃!! ふ~う! 姐さんが来てくれた! 

 しかし……強力な戦力である彼女の姿が見えないのは、おかしいと思ってはいた。

 いたが――何故、その面子共に入ってくる? 

 彼女? は古強者。古参中の古参。現状打破のために知恵を借りたのか? 

 

 しかし――刃さんがいつもの温かみのある微笑みを浮かべていない……。今はとても、強張った表情をしている? 

 刃さんの顔がこちらに向けられた時――

「っ!」

 ? 一瞬、表情が歪んだ? 視線の先は俺――ではない? 誰を見て――――

 穂乃香?


 

 俺たちへの労い。情報秘匿のための人数制限。少数精鋭での状況打破。

 そんな前置きを簡単に済ませ、時間が惜しいとばかりに局長が現状を語る。


「――元凶がわからないのです。具体的に言えば大本だと思われた個体は既に彼女、志藤凜によって討伐されています。彼女が派遣された翌日に。では何故、悪性固体の出現が止まらないのか、様々な方向性から検討を続けていますが――先ほど申し上げたとおり、成果は出ておりません……。申し訳ありませんみなさん。あなた達が必死になって稼いでくれている時間を――我々は活かせませんでした。どうか……この私の無能をお許しください」


「本当に申し訳ない!! 俺たちは……お前らの頭がおかしくなっちまうまで酷使しているのにっ! ……なんの成果もあげられなかった! すまない……。だが――本件に関わる職員全てが事態の究明に向け、お前たちのように懸命に取り組んでくれている……。虫のいい話だが、どうか彼らを責めないでやってほしい……。不甲斐ないのは上に立つ俺たちなんだ。本当に済まない」

 

 局長と副局長が深く、深く頭を下げる。二人の表情は悲嘆に満ちてる。目の下には酷いクマができており、顔色も悪い。……奏さんの長い綺麗な髪にいつもの艶はなく、乱れ傷んでいるように見える。痛ましい……。

 藤堂さんは、イケオジから――連盟の制服を着ただけの浮浪者にジョブチェンジしてしまっている。髭もじゃだ。ちょっと面白い……。ぷっ。


「頭上げてくれ二人ともっ!! 俺たちはあんた達を疑ってなんかねぇよ! あんた達が頑張ってくれてるのは分かってる! そんなことはどうでもいいんだ! それよりこれからのことを決めようや!!」

「応よっ! いつも局長と、副局長には感謝してんだ! これくらいどうってことねぇよ! 頭上げてくれ!」

「fhbgflvddj!fb bんfhごbfdphrghg! ふんばっ!」

「そうだ! そうだ? なぁ、いまあいつなんて言った?」

「そうですよっ! 早く顔を上げてくださいっ! 私たちなら大丈夫ですからっ!」

 陽キャ達が二人に励ましの声を送っている。うむっ! 素晴らしい! 俺も同じ気持ちだっ! 恥ずかしいから声かけられないけど……。届けマイハートっ! しかし、原因不明ねぇ……。ヤバくね? どうすんだべっ!

 

「んで? どうすんだよこれから? このまま自然に減っていくなんてことにはならねぇのか?」

「そもそも、その原因ぽかった奴を本部の姉ちゃんが殺り損ねてたってことはねぇんだよな?」

「……流石に今の状況以上に悪性個体が出現することになったら対処は難しいと思うわ……。本部から、さらに増援を要請できないの?」

「本部の姉ちゃん彼氏いんの?」

「志藤凛さん! ずっと前からあなたのことが好きでした!! どうか私とお付き合いをっ!」

「凛ちゃん! スリーサイズはっ! おっぱい大きいね! ぼくとスケベしようやっ!」

「本部の人情けないですっ! 全然役に立ってないじゃないですかっ! もっと頑張ってくださいっ! これじゃあ来た意味ないじゃないですかっ!」

 二人の頭が上げられたのを見計らって様々な質問、意見が飛ぶ。質問の内容は、もちろん同席している本部所属の彼女にも及ぶ。

 ただ……真面目な質問が多い中――全く関係ないセクハラ染みた質問、ただの悪口を叫ぶ声は、俺のすぐ近くから聞こえた……。やめたげなよぉ……。

 

 しっかり聞こえていたらしい志藤さんのお顔は――セクハラで赤くなり、悪口で般若のように変化した。おっかねぇ……。

 一つ一つの質問に真摯に答えていく御三方。もちろん真面目な質問だけにだが。

「「「ぶ~ぶ~!!」」」

 まっすぐ一本! 筋の通った愛すべき馬鹿たち。

「むふ~!」

 宿敵の反応に満足した悪戯天使ほのか

 ここにいるとなんか落ち着くなぁ~。ほっこり。


 ……ただ――刃さんの顔が忘れられない。彼女は何故あんな顔を?  

 俺の気のせい? だったんだろうか……。

 彼女は今、俺にその大きな背中しか見せてくれない。

 

 俺の顔、酷過ぎたのかな? もう一本キメとくか……。

*後書き

 次回あたりから、一気に展開を動かしたい! きっと! たぶん……。(願望)

 ただ、頭の働きが鈍いっ! エナドリも尽きそうだ……。チカレタ……。

 読んでいただきありがとうございます。

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