第37話 限界突破! ブラックホワイト!

 現在長野支部で活動している上位連盟員、『悪性個体』を狩れる力をを持った者たちが一堂に会する。その数は総勢二百を優に越し、壮観な光景が広がっている――と思ったのだが……。

 些か数が少なすぎやしないだろうか? 今以いまもって集まっている人数は、二十人ほど……? どうしたんだろう? みんな遅刻しちゃったの? それとも俺みたいに働かされ過ぎて、壊れちゃった? ……でも、俺は壊れてるのに呼ばれてるからそれはちがうのか……? う~ん……よく分かんない。 まぁとりあえず笑っとこう! だって楽しいからっ! 

「あははははははっ! あっははあははははあはっ!」

 

 急に笑い出した俺を気味悪そうに見るもの、痛ましい視線を向けるもの、俺に同調して笑い出すもの、武器を抜くもの、反応はいろいろだった! でも――

「漣さん! いい子ですからっ、落ち着いて! 静かにしましょうね~ いいこ~いいこ~」

 分かった! 穂乃香がそう言うならボクっ! 静かにできるっ! ボク、いい子だからっ! えへへ~、ほめてほめてっ!


 「漣の不安定さが怖いよ、俺……。もう病気だろそれ? なんで突然笑いだすんだよ……。なんか面白れぇことあったか?」

「その顔で笑いだされるとマジで怖い。笑ってるけど真顔だし、血走った目ん玉、がん開きだし……夢に出そうだぜ……。何より――穂乃香ちゃんが不憫だ……。あれはもう介護だろ?」

 タツとガスがなんか言ってぇら~。あへ~。

「もう漣のことは穂乃香ちゃんに任せとけ。んなことより……どうなってんだ? 全然数いねぇじゃねぇか……。上の連中、何考えてんだ?」

 流石はたっちゃん! 俺と同じ意見だ!

「あぁ、俺も同じことを考えていた。明らかに数を抑えている。意図的なものだとするならば――情報の秘匿が目的か?」

 おまけに集まるように指定されたこの地下室……。――これは龍脈の流れを利用した、とびっきり強力な魔力防壁を組んであるな……。恐らくは、局長と副局長の合作。すさまじい精度の魔術だ。外界とのつながりを一切遮断しているのか――

「なんでいきなり、饒舌に話始めるんだよっ! お前は! ビックリするだろうがっ!」

「っ!! 漣さんっ! もしかして――」 

 ガスが、がなり立て、穂乃香が期待に満ちた顔で俺を見つめてくる。しかし――


「いや、たまたま情調が少しだけ安定しただけだ。またすぐに戻ってしまう……。すまない穂乃香、期待させてしまって……。あと五分もしない内に俺は、先ほどまでの気が触れた状態に戻ってしまうだろう」

「漣さん……」

 悲しげな表情で穂乃香が俺を見つめる。


「気が触れてる自覚あんのな……」

「逆に哀れだな」

「……漣、少しこっちに――」

「ん? あぁ」

 モフモフ狂いみっちゃんが俺を穂乃香から見えない位置に誘導する。すると奴は、懐から特徴的なラベルに包まれた飲み物? を手渡してくる。――これはいったい……。

「ブラックホワイトだ」

「!? 劇薬じゃないかっ!」

「あぁ、お前に翼と活力、覇気を授けてくれる。眠気を吹き飛ばし、体に力、精神に充実を与えてくれる。これを飲めば今のお前でも……四時間ぐらいなら正気を保てる――かもしれない」

「……っ」(ごくり)

「これをお前に六本やる。分かっていると思うが劇薬だ――体のことを考えるなら一日、二本までにしておけ。もし、二本以上飲むようなことをすれば……体や精神に与える影響は計り知れない。……廃人になる可能性も――」

「みっちゃん! わかってる……。ありがとう。この礼はいつか必ず」

「……気にするな――大したことじゃあない。……今回はかなりきな臭い。気をつけろよ漣」

「あぁ。そっちもな――!!」

 みっちゃんとの会話に区切りがついた直後、ブラックホワイトを一気に飲み下す! 

 強烈な刺激が舌を駆け巡る。

 爽やかな甘みと、強めの酸味。

 飲んだ後に残る独特の薬っぽさ。

「う~ん! 元気満タンだぜっ!」

 俺はまだ――舞えるっ!!

  

 残り五本。

*ブラックホワイトは劇薬ではない。現代のエナジードリンク。


*後書き

読んでくださりありがとうございます。

応援、お星さま、コメントくれると、エナジードリンクを飲みながら、ハイになっている作者が、さらにハイになれるのでよろしくお願いします。

 

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