第19話 月が
連盟に、本日の成果である常駐依頼モンスターの討伐証明部位と、資源素材を納入する。
常駐依頼ではないカマキリ型は、素材だけを納入する。資源的価値が高いのは鎌の部分。半分は粉々だが、もう半分はきれいな形で納入できたので、そこそこの収入が期待できるとのこと。穂乃香も喜んでいた。
穂乃香、初の討伐依頼無事完了!
ということで、朝から気を揉んでいてくださった
普通に祝勝パーティーがはじまった……。
別にいいんだけどね……。でも、いつぞやのような目に合うのだけは避けたい。切実に。
今日の穂乃香の活躍を伝えると、みんなとても喜んでくれた。雑魚はワンパンだったというと、男連中が「ヒューヒュー!!」と口笛をならしながら
ワーム系の気色悪さに敗北したことを伝えると、女性陣が少し気落ちした穂乃香を慰める。男連中も傍により励ましたがっていたが──女性陣にブロックされていた。みな気落ちした様子で『しゅん』となっていた。ざまぁっ! 酒が美味いわっ!
酒飲んで気が大きくなったオイラは、『君たちは違うんだよ』みたいな顔でマウントとっていたら、盛大に絡まれた。
「一人だけ優越感に浸った顔をしてんじゃねぇよこのクソ陰キャが!!」
「「「そうだそうだ!!!」」」
「あ゙ぁ!! ワーム系の気持ち悪さと変わらねぇ連中が吠えるじゃねぇか!! おぉん!!」
「「「がやがやがや!!!!」」」
「あ~らぁぼぅやたちぃ~、あんまりオイタしちゃだめよ♡ ほのちゃんが心配しちゃうでしょ♥」
「「「「……はい。すいませんでした! ごめんなさい。もうしません。ゆるしてください……」」」」
彼女が、カマキリ型を一人で討伐したことを俺が自慢げに語ると非常に盛り上がり、最高に気分が良かったが──
「危ない事させてんじゃないわよ!! ぶっ殺すわよ!!」
巻き舌ぎみのドスの効いた声で怒られた。
「ごえんなさい」
……こわい。
みんなで穂乃香を
相も変わらず、ガスの顔色が赤から青へ変化し始めた。危険なサインだし、穂乃香も疲れているだろうと、お暇させていただく。
ガスは絡んできそうだったが、奴はこちらに近づく前に急に止まって動かなくなった。たっちゃんに氷のバケツを渡し、クールに店を去る。
「お~~~~~~~うぇぼろおろろおろろろろろろおおろろうぇ……ごぼぉぇっ」
汚い……。
月が綺麗な夜だった。
街灯の明かりもいらないくらい、月の光が濃い。
薄暗い道に四っつ、影が並ぶ。
クラン用の区画のため、人の往来もなくとても静かだ。
青白い月の光に照らされながら穂乃香は楽し気にくるくる回ったり、軽快なステップを刻む。そして──綺麗な声で歌を口ずさむ。
「~~~~♪ ~~~~♪」
彼女の綺麗な髪が月の光を受け、神秘的な魅力を感じさせる。
彼女の動きに合わせ、なびく髪やローブが美しい。
帰るまでの少しの間、美しい歌に聞き惚れ、彼女の踊るような姿に魅了された。
『あぁ 本当に 月が綺麗だ……』
「「「ただいま~」」」「ヴぉっふ~」
みんなで仲良くただいまの挨拶!
やっぱり家に帰ってくると落ち着くなぁ~。お家大好き~。
リビングでまったりして──風呂入って、歯磨きしておやすみなさい~。
きょうのほのかさんは、ねるときにおててをからめてきた!
こいびとつなぎだ! ぼくしってるよ!! ひそかなあこがれだったからね!
すっごくどきどきしちゃったっ! でもおいらはまけないぞ!!
すぴ~~~。
翌日──
朝食を済ませみんなでぬくぬくしている。
休日のこの時間がたまらない。あぁ、永遠にこの時間が続けばいい────
なんて考えながらも、大事なことを決めなければならないので我が家の住人の注目を集める。
「はいみなさん! 今日はみなさんにお伝えしなければいけないことがありまっっす!」
「「「???」」」
「はい!! それは目前に迫った穂乃香のお誕生日をどうするかデッス!」
「あの、でも高価なプレゼントも頂いたので──」
申し訳なさそうにし、遠慮しようとしている穂乃香の言葉をぶった切る!
「いいんです! あれはクラン主なら当然のことなんです! お誕生日のお祝いは必ずやるのです!!」
無理やり押し通す! だってお誕生日、祝ってあげたいもん! ぜったいやるんだぁっ!! 穂乃香たん喜ばせるのぉ!
「わ~い! お祝いだ~♪」
「ヴォッフ♪ ヴォッフ♪」
はしゃぎまわるふわもこ
「え~い落ち着け~」
俺は、二人を確保し撫でまわす。あぁ~きもちぃ~
「…! わたしも仲間にい~れて♪」
四人できゃっきゃっしながら戯れる。あぁ~癒される~。最高に幸福を感じてる。
グダグダしたまま話を進める。
「でっ、だ。突然で申し訳ないんだが穂乃香さんから要望などありますでしょうか?」(ぐで~ん)
ぐで~んとなっている俺の腹の上で、アオがでろ~んと寛いでいる。
「う~ん、そうですねぇ~」(だら~ん)
「なんでもいいよ。大勢で祝ってほしいとか?(友達少ないから不安だけど)高級なお店で美味しいもの食べたいとか?」
「う~ん……」
俺の提案はあまりピンとこなかった様子の彼女。
彼女はポンタに凭れかかりながら、悩む素振りを見せる。
暫く、ポンタに凭れ掛かった体勢のまま「う~ん、う~ん」と悩んでる彼女だったが──
「うん! なら私の歓迎会をしてくれたときみたいに、お家でお祝いをしてほしいです! アオ君、ポンちゃん、漣さん、お願いしてもいいですか?」
なんてことない、非常に慎ましやかな願いを口にする。。
「「合点っ!!」」「ヴぉふ!」
豪勢な料理を用意しなくちゃだな!
お手製の料理もいっぱい作りたいなぁ……。
「よし! じゃあ準備っ! 頑張りましょうっ! ポンタ! アオ!」
「お~!」「ヴぉふ~!」
「ふふっ♪ 楽しみだなぁ」
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