浸食世界 ~異世界ゲートを持つ男~
ににしー
日常の終わり
起きるという行為を意識的にしたことはあるだろうか。
きっと大勢の人たちは無意識に起きるだろう、スマートフォンのアラームが鳴ったり窓からの日差しで目が覚めたり。
僕はみんなと違う起き方をする。
「そろそろ7時か。起きよう。」
睡眠から覚醒するのに、意識があった。
どんな夢を見ていても夢だと認識し、外の時間も把握出来ていた。
きっと心の病か特殊能力か、どちらにしろあまり気にしてはいなかった。
「今日は確か、出社しなきゃいけない日だったかな。」
いつものベットから起き上がるとカレンダーを見て、少し憂鬱な気分になった。
だってそうだろう。
普段在宅勤務をしているプログラマーがわざわざ会社に出社しなければいけない日なんて憂鬱以外の何物でもない。
洗面台へ向かい歯を磨き、寝ぐせを整えスーツに着替える。
ワンルームマンションに住み始めて5年以上が過ぎた。
何も変わらない景色、何も変わらない朝のルーティーン。
家から出るとそれはもう綺麗な晴天だった。
11月なのに外はまるで夏のように暑かった。
「気温高すぎないか...うわ。25度もあるのか。」
これから冬に差し掛かろうとしているのに25度。ちなみに昨日は15度だった。
太陽様は僕が外出するのが嬉しいのかな。
家から会社へは電車で30分ほどで着く。家から駅は...それも30分ほどだ。
しょうがない。家賃が安いんだ。30分歩くことなんてお金に比べたら苦では...ない。と思う。
朝から憂鬱になり駅に着くころにはインナーが汗で湿っていた。
最寄りの駅に着いた、スマートフォンをかざし改札を通る。
ホームに降りるといつも通り大勢の人がまるでテトリスかのごとくひしめき合っていた。
誰にも聞こえない溜息を5回ほど吐き、自分もそのテトリスへ合流した。
「間もなく電車が到着します。黄色い線の内側でお待ちください。」
アナウンスが流れ電車が到着した。
ドアが開くとなだれ込むように入っていく。
吸引力凄いよなっていつも思う。
ギュウギュウに押し込められ、つり革がある所まで行けず左右のドアの真ん中に位置取りしてしまった。
不幸が重なってしまった。
目の前に女子高生がいる。
まずい!両手を上げなきゃ!
久々の出社で憂鬱なのに痴漢の冤罪でも食らったら自殺もんだ。
両手を上にあげ、絶対に触れません。というオーラを出しながら電車に揺られる。
ひたすら上を向いてCMが流れている画面を凝視していた。
この時間はとてつもなく長かったように思う。
「急停車致します。」
ガコッ!キッー!!!!
おいおい...もしかして人身か...?
急停車には微動だにしない人たち。慣れてるんだろう。
すぐ動くだろう。
.
..
...
....
.....
「ただ今この電車は、途中駅でのお客様対応の影響により、運行見合わせとなっております。引き続き状況が分かり次第ご連絡させて頂きます。お急ぎのところお客様にはご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ございません。」
「もしもし、今電車止まってて出社遅れそうだわ。〇〇に伝えといてくれ。」
「すいません足踏まないでください。」
「暑いから窓あけてください!」
「お母さん?今電車止まっちゃって、そっち着くの遅くなりそう。」
様々な人の声が飛び交っていた。
一応電話しておくか。
プルルルル...
ツーツーツー
「ん?あれ。繋がらない」
プルルルルル....ガチャ
「「もしもし?悪い電話してた。」」
「あ、繋がって良かったです。実は電車が止まってしまいまして、出社遅れちゃいそうです。」
「「俺もなんだよ。まぁ上には伝えとくから無事出社してくれぇい」」
ガチャ
田中部長も遅延...?あの人うちと逆方向じゃなかったっけ。
「1度に同じタイミングで複数の電車が止まることなんて...」
あるはずないと。思っていた。
「え!?そっちも止まってるの?」
目の前の女子高生がかなり驚いた様子で電話をしている。
「あみにも確認してみる!」
「もしもし?あみ?今どこ?」
「え...そっちも止まってるの...」
この先の出来事が僕の人生を大きく変え、そして世界が変わる瞬間だった。
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