消し忘れた『I Love you』

たから聖

第1話 消し忘れた、【I Love you】

『オイッ兄貴!!辞めろって!』


俺の兄貴は同じ高校の2つ上。

いい加減、彼女が出来ない俺の部屋を探索しては、

面白いモノが無いかを、からかってくるのが日課だ。


兄貴はイケメンで、弟の俺と違って、陽キャキャラだ。



兄貴は外面が、良いので好きな

二次元のアニメとかを

俺の部屋からくすねていく。


『それ!まだ見てねぇやつだろ、ダメだって!』



『まぁ、今度女紹介すっから。』


いつもこれだ。


この言い訳で、俺を黙らす……

紹介すら、して貰えないのに

どっかで信用してしまう、

情けない俺。


あ〜ぁ゛。miyuさん見たかったなぁ〜。はぁ。



ベッドに突っ伏すオレ……。



そう言えば兄貴、、、近頃あの子と一緒に居ねぇなぁ?

今度、聞いてみるか!



オレは、その女の子の事が内心とても、気に入っていたのだ。


名前は由利香。



須藤由利香…。

背中まで伸びた髪は、程よくピンクに色付けされて、

なおかつ、パーツパーツが整った顔立ちに、うっすら化粧を

していた、まさに美人さん。という理由だけで

兄貴が付き合ったカノジョだ。




正直言うと、オレは須藤由利香の事がとても好きだった。


兄貴ユウジが家に連れてくる度に、オレは胸を踊らせた。


毎度毎度、カノジョはケーキを

オレに買ってきてくれていた。




『そうだよな!彼氏の弟だもんな!』


でも、女性からプレゼントされるなんて、


しかも美人さんだから

オレは完璧舞い上がっていた。



兄貴ユウジと違って陰キャなオレは、嬉しくて仕方なかった。



そう……。

を境に……カノジョは来なくなった。




兄貴ユウジは、別れたとも、何も言わなかった。

オレは来客が来なくなって寂しくなった。



でも、この気持ちは兄貴ユウジには悟られないようにしなくちゃな。


小さい頃からそうだ。

兄貴の持ってるオモチャ、洋服、

全てにおいて

オレ……2番目だもんな?




女もお下がりかよ?

笑われるの目に見えてる!


俺には兄貴みたいな勇気は出ないよ。いいな兄貴はさ。


いっつも楽しそうで。





陽キャの兄貴、陰キャなオレ……




そんな時、何気なくポケットに手を入れた。



【ガサッッ】

『ん?』


手を広げてみると、マーブルチョコレートの小さな可愛い箱が

出てきた。



オレはあまり考えずに、ポイッと机の上に投げた。



【ガチャ!】



『よぉ、またかよ?』

言うんだ!聞くんだオレ!

須藤由利香の事を!!



いつになく兄貴は真面目な顔をしていた。




兄貴はイキナリ

『なぁ、お前って、須藤の事好きか??』


オレの体の血液が全部ほほに集まったかの様な焦り方を

思わずしてしまった。



焦ったオレ……だが。時すでに遅し。兄貴にバレた。



『そっかぁ。分かった。』

そう言って、兄貴は部屋を出ていった。


(何なんだよ??訳わかんねぇ)




次の日、学校へ行く時、久しぶりに須藤由利香の姿を見た。


兄貴の肩に手を置きながらも

仲良く話している。オレは嫉妬した。



顔に出るタイプなんだよな。オレ……。


怒りと悲しみを浮かべた表情で、2人を追い越そうとした、、、


その時……



須藤由利香に呼び止められた。


『久しぶり!!コウジ君!元気だった?』

『……まぁまぁッス。』



『つれないなぁ?私はコウジ君の顔が見たかったよ?』


『??!!!は?』

ホントは飛び上がるほど嬉しいくせに、兄貴のお下がりかよ?

とか……またパシリかよ。とか…


色々考えて、

つれない返事をしてしまった。




『ね?1年前のマーブルチョコレート食べてくれた??』


『え!!!は!あ、、あれ?』



驚きというかなんと言うか……

一瞬でオレは顔が真っ赤になった。



そんなオレを見ながらも、須藤由利香は、顔を覗き込んでくる。



(近いって!近い!理性保てなくなんだろぅ?やべぇ!)


ふわん、、とローズの香りがした。

オレは恥ずかしさの余り下を向く。



無言のオレに、須藤由利香は

『手紙、ありがとう!!』



へ??手紙??意味わからんし。何言って……って、あ!!!!


思い出してオレは赤面ぶっこいた!



その手紙とは、




須藤由利香…さんへ。

と書いた手紙。


兄貴に飽きたら、オレと遊んでくださいって、書いたわ…オレ!





うかつだったァ…恥だよ恥!!

しまった!!!


逃げ出したくなるオレに、

須藤由利香はウデを絡ませてきた。



『I Love you』って書いてあったよ?ありがとう!

と、、、覚えがねぇ。顔から火が出そうだ!!




その時……兄貴に目をやると、

笑いをこらえながらも、オレに

ウインクした。



内心ドキドキしながらも、

先手を打つ兄貴に感謝しながら


オレは真っ赤な顔で告白したんだ。




『お、オレ……須藤さんが前から好きだった!だけど、オレ……』


口ごもるオレに

須藤由利香はほっぺにキスをしてきた。



生徒達が、一斉に注目してくる。



ザワザワしているが須藤由利香はへいちゃらみたいだ。



『陰キャだろうが関係ないよ?ワタシ……コウジ君が可愛くて。』


天使の笑みで

オレはノックアウト寸前だ。



(1年越しのI Love youかよ。ドラマか?マジですか??!)



須藤由利香のおかげで、

オレは少しづつ陰キャから卒業出来そうだ。







HAPPY END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

消し忘れた『I Love you』 たから聖 @08061012

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る