412

 それからのおまえは、一夜で世界が変わったように、スポットライトを浴び続けた。


 まるで今までが虚構のように。偶像のように。


「ライ、一緒に来てくれ」


 重用された俺も、光を浴びた。


 降り注ぐフラッシュが眩しかった。


 ――おまえが時折、後藤ごとう崎山さきやまと共に消えるのは……見ないふりをした。


「流石じゃないか、ライ」


 そんなお前の甘言に、俺は自分を肯定し続けた。


 おまえと共に、あらゆることを開発した。


 世界中のワープチャネルを細分化し、機関の科学力をもってして、未知のエリアがゼロになり、富さえあれば人類がいけないところはなくなった。


 同時に、人類の遺産、AIdエイドの管理システムをマイグレーション、刷新し、人類が考えうる有機物、無機物全て、作れないものが無くなった。


 原子さえも――。


 人類は真空空間にさえ無から酸素、二酸化炭素を生み出すことが出来、宇宙開発が爆心的に進んだが、人はやはり惑星ほしに戻る――。


 IOPを中心に経済、環境が超速で発展し、世界を手にした気でいた。


 おまえは特務機関長官になっていた。


 偽りの身体を引きずりながら。


後藤ごとう崎山さきやまと縁を切れ」


 月を眺めるお前に言ったことがった。


「無理だよ」


 黄金のゴブレットに注いだミードを揺らしながら、お前は微笑わらう。


 いつも同じ表情かおで――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る