399

 ブーツがHyLAハイラの灰色の通路を歩く音が好きだ。


 レイチェルさんにもらった黒のチェルシーブーツが少し灰がかってきたけど、硬い通路にトン、と響く音がアタシには心地いい。


 食堂でしっかり朝ご飯を食べる。


 わかめのお味噌汁と、白いごはん。


 スクランブルエッグにウィンナー、少し塩気のある鮭の塩焼き。


 それから焼きのりと冷ややっこ。


 果汁たっぷりのオレンジジュースと牛乳も飲む。


「ミカー、コーヒ淹れたよ☆」


「ん!」


 幸子さちこと並んでカウンターでコーヒーを飲む。


 食堂の大きな窓の外には碧い惑星ほし


 小学校の時の理科の授業で、ホログラム投影室で何度も見た光景だけど、こうして実際に見ると神聖な気持ちになる。


 いくつもの歴史を重ねて、失敗も、幸せも、全部が詰まったアタシたちの惑星ほし


 少し心許ない気持ちにもなるし、なぜか少し、感動してしまう。


「あったかいね」


「ん」


 新品のマグカップから昇る煙に包まれていると、優しくて、少し家に帰りたい気持ちになる。


 だけど、コーヒーの苦みがそれを少し薄めてくれる。


「朝ご飯食べると元気になるね。おかーさんのごはんが食べたくなるけど」


「……思った」


 おかーさんは、アタシの母のこと。


「まぁ、母も元気でやってるはずよ」


「そだね☆」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る