380

小松こまつ!もう行け!!!」


「待って下さい!ライさん——」


 部下の転送装置は俺が取り付けた。サブローに頼んで。


「コズミナルエネルギー、充填」


 青いジャケットも、俺が作ってもらった。


 奴が、俺に似合うと言ってくれた青。


水素針すいそしん、射出」


 サファイアブルーのこの針は、俺を戒める棘だ。


「青い約束か……」


 年甲斐もなく筋トレなんかしてみたけど、針を持つ手が震えているのが笑えてくる。


「怖いのか、俺は」


 子どもたちですら、闘っているというのに。


「この歳になっても」


 いくつもの修羅場を乗り越えて来た筈だ。それなのに。


 ……盟友の姿を思い出し、片方の手で震える腕に触れる。今度こそ……


「後悔は御免だ!」


 サーチモノクルにもやの分布図が映る。


「敵は近い!!!」


 エリアBの灰色の通路はレイダーが駆動出来ない!生身の俺では潰されるだけかもしれない!!


「アクアフルール!!!ぐっ」


 昔の勘が、衝撃から身を守った。


「それでもなぁ!」


 何もないロビーに、悪意の化身それは蔓延っていた。


「おぉこれは……差し詰め、壊れかけのプラネタリウムか……」


 破壊されたロビーに宙を舞うちりが星のように……悪意あくいを放っている。


「俺ァもう騙されねェ」


 美しさ、ばかりが正しさじゃない。


「そうだろ?神様よぉ」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る