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「これで、最後かな」


 神殿の残骸を全て集めると、そこはただの水の底だった。


 カードタイプの亜空間格納庫イベントリに設られた碧い石は、水中ドローンのライトアップを反射して、ささやかに光っている。


 中に秘密を閉じ込めて。


 あの日、サブローは言った。


 真珠を獲得して以降、東京湾内のもやが消えたと。


 真珠は、ただの真珠だった。


 それは他の宝石と等しく美しく、けれど確かに、もやは消えさったのだ。


「今後、ハイドロレイダー、ファントムレイダー、フィンヨンレイダーには、再度湾内に潜ってもらい、東京海底谷トーキョーキャニオンの調査、特に、真珠があった地点の建造物の残骸を確保してもらいたい」


 そのミッションも、無事に終了しそうだ。


「また、皆さんには各地でもこの真珠、またはなんらかの宝石が発生している可能性があるのを調査したいと思っています」


「それは、普通の宝石と見分ける方法は見つかっているのでしょうか」


 雪子せつこさんが聞いた。


「いや、無い」


 途方もない話だ。


 この惑星ほしのあらゆる場所には、宝石も、原石も溢れているのだから。


「ひとまず、もやの近くにある可能性は多いにある。討伐の際、無理のない範囲で探索を行なってもらうという流れだ。これがもしかして、人類を救う希望になるかもしれないと思っています」

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