手のひらの石……——風前の紅葉

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「泣いたらすっきりしたよー……☆」


「……豆腐のお味噌汁、あるよウチ」


 これも幸子さちこの好物だ。


「食べるー!!えっ、いやダメだ!こんな顔シュウジ君に見せられないじゃん!!!」


 幸子さちこは立ち上がって鏡を見つめて青くなっていた。


「別に気にしないよ……」


「ダメなのー!いいよー、ココアれるから」


 こぽこぽとお湯が沸く。


「……また作るよ」


「ミカが作ったんだ」


「うん」


 真っ白なマグカップに、あったかいココアが2つ。


 アタシたちは並んで白いソファーに座った。


 湯気がまだ熱い。


 甘苦いその香りは、少し心に優しい。


 薄暗い部屋の、ホログラムミニシアターには昔よく見た、小学5年生の男の子が主人公のアニメが映し出されていた。


「私、これ好きなんだよ、ミカ」


「わかる」


「眠れない夜に観るんだ」


 そんな夜、友だちに訪れなければいいのに。


 心がちくりとして、自分と同じ部分に安心もする。


「おいしーね、ココア」


「秋だね」


「何それ、でもそうかも」


「冬のココアもいーけどさ」


「そうかも」


 違いとシンクロする温度。


 悲しみと安らぎはいつのまにか混ざって消えていくのかもしれない。


 カップの中で、慣れていく苦味みたいに。


「ねぇミカ」


 こんな夜があってもいいのかもしれない。


「おいしーね」


「うん」

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