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 稲光りが曇天から都市を貫いた——


「……怖い……」


 母は仕事に行って、シュウジと二人きり。


 トタン屋根に豪雨が突き刺してガチャガチャ鳴っていた——。


 なんだか、昔みたいだった。


あね、カフェラテ飲む?」


 らない。


 そう言おうとして、思い止まった。


「貰おうかな……」


「いいよ」


 四畳半のガラス戸の隣の、一畳もないキッチンから、コポコポとお湯が沸く音が聴こえる。


 数ミリ開けたサッシの間から、水が溢れてくるのをアタシはため息で閉じた。


「凄い雨だね」


 カフェラテの匂い。


 雨のせいか、少し寒かった。


「うん」


 本当なら今日、東京湾内調査の実施だったけれど、天気は、アタシの不安を汲んだかのような雨を降らせた。


 せっかくやる気になっていたのに、という思いと、少しほっとした気持ち。


 そしてそんな自分にがっかりする気持ち。


 動けないアタシたちは迷子のようだったけど、それでも明るいシュウジの笑顔に、ますますがっかりしてしまう。


 バシャバシャと玄関のドアが開いた。


「やばー……傘意味ないな……」


そうちゃん、タオル」


「シュウジ、ありがとう」


 嵐の日、アタシたちは昔、こんな風に三人で過ごした。


 二人は古代のテレビゲームを始めて、アタシは転がったり塗り絵をしたり。

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