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イテッ」


 ぴし、と手が叩かれて、記憶が現在に戻る。


「キュロス君、それ、からい。ドキドキしてる時辛からいのダメ。私たちはやめたほうがいい」


 搭乗を終えても、確かに、俺の鼓動は鳴り止まなかった。


「こっち。暑い時、黒蜜いいんだよ」


 リディアは俺の手の中の赤いキャンディと、黒糖黒蜜キャンディを交換した。


 初めての自分の操縦を終え、甘いものなんて気分じゃなかったけど、口に入れた黒蜜の味は、思いのほか旨くて気持ちが丸くなってくる。


「か、からー!!!」


 ほっしーが叫んだ。


「でも美味しい……何これイチゴかと思ったら唐辛子?」


「はちみつ唐辛子キャンディだ。少しのカプサイシンはディスカッションの時なんかにいいんだよ」


 三島みしまさんはそう言って赤いキャンディを放り込んだ。


「うん、旨い!」


 キャンディは旨いけど、こんな感じでいいんだろうか……。


「疲れたまんまじゃいいアイデアがデナイ」


 リディアが満足そうにアメを転がしている。


 確かに俺は疲れていた。


 乗ってる時は夢中で、討伐が成功したアドレナリンで、なんかどこまでも大丈夫な気がしていたが……良く考えると、俺って結構凄かったんじゃないか??つーか、そうはほんとどうした!


 ……と思っていたら、メッセージが届いた。


 ——リイヤ、お疲れ!




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