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 鬱蒼としたメタセコイアが、取り囲んでいる。


 息をするのも忘れてしまう、コバルトブルーの湖畔に、その館は佇んでいた。


 つる薔薇に覆われたその洋館は、西洋の雰囲気を醸してもいたし、人にらざる者の存在を予見させるようにも思う。


 朝靄あさもやの中を、アタシは恐る恐る進んだ。


 真鍮しんちゅうのドアノッカーをカツン、カツンと叩くと、童話の世界に迷い込んだような気がした。


 ギィ……と扉が音を立てて開く。


 燕尾服を着た老紳士が、うやうやしく頭を下げてくれた。


「おはようございます、お嬢様……」


「いやっすいません、お邪魔します」


 セーラー服が、浮いてやしないだろうか……。


 綺麗に磨かれたガラス窓に映る自分の姿を確かめながら、美しい調度品で調えられたブラウンの絨毯の上を紳士に続いて歩いていく。


 それにしても、本当に綺麗なコバルトブルー。


 吸い込まれそうなその青に、アタシは足を止めた。


「美しい眺めですよね。秋は、湖を取り囲むメタセコイアが色付いて、また違う風景になるのですよ」


「とてもいいですね」


 ひとしきり眺めて、銀色の扉の前に立つ。


「こちらです」


 紳士にお礼を言って、アタシは扉をゆっくりと開けた……


「ようこそ、我が城へ」


 薔薇で装飾されたロッキングチェアから、虹色の瞳がこちらを見た。

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