六月のブルー……——灰色の雨

　言葉が出ない。

　そりゃあ、アタシには出来ることが少ない。

　それでもこんな風に、何もやることはないから帰れなんて言われると、自分を否定された気持ちになる。

　旧IOPブルーホールエリアの場所は秘密とされており、認識阻害粒子で覆われているため、エリア内はワープが阻害される。

　……から、ワープ可能なエリアまでゆっくり航行し、それまではこの船（ブライトオブノア）の中に居なければならない。

　それが二週間程。

　この船には何もかも揃ってる。

　カフェも図書室も、映画館すらある。

　でも、そんなにも楓（かえで）に会えないのが寂しい……。

「みっちゃん。朝食後の甲板（デッキ）の散歩でもどう？」

「……何でそんな嬉しそうなのよ、宗（そう）ちゃん」

　艦橋（ブリッジ）の指揮官として、宗（そう）ちゃんは睡眠を削ってロボ菜（な）ちゃんを救った。

　なのに、突然出てきた篠坂（しのさか）先生に急にお前はもう要らないなんて言われて、アタシよりきついと思う。

「そう？でもみっちゃんが言ったんでしょ？たまには休めってさ。ここって何もかもかっこいいし、海も空も綺麗だし、気になるとすれば、シュウジに悪いなってことくらいかな。ジオラマルームが副艦になって離脱……なんてむしろテンション上がったね」

　この不謹慎兄弟！！！

「それに。……変なトコばかりじゃないんだよ、篠坂（しのさか）先生ってさ」

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい