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 ガラスみたいな青いキャンディ。


 潮風の風味とまざり、ほんのり甘い。



 艦橋ブリッジに行くと、みんな穏やかだった。


 昨日のことがまるで嘘みたいに。


 今日は家庭科の授業があって、内容はプリン作りだったから残念だけど……授業は休みになったので、あとは帰るだけだ。


 ジュンも、リイヤもよく眠れたみたいで、コーヒーを飲みながら寛いでいた。


「なんか……動いてる……」


「どうしたロ?……むぐっ」


 まだ溶け残る甘い味が、口の中から飛び出してしまいそうになって両手で受け止める。


「どういう……ことだ?」


 そうちゃんが立ち上がる。


 メインモニターに映るブルーホールが、少しずつ遠ざかっていく……


 ガイン!!!


 激しい揺れと共に、船体が揺れた。


篠坂しのさか先生!!!」


 そうちゃんが通信機に向かって叫ぶ……


「何……アレ……」


 ブルーホールの上空に小型飛行艦が旋回する……


「これより、ブライトオブノアはエリアBに帰還。自動航行システム作動」


 通信機から篠坂しのさか先生の冷たい声が響く。


「待ってください!一人で残るつもりですか!?」


「生徒、及びB契約スタッフはエリアB帰還後ワープにて各居住区に帰還。命令だ」


 通信が途絶えた。



 焦燥と不安が、甘い自分に溶け込んでいく。


 ガラスみたいな、青いキャンディ。

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