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「ムンッ!」


 爆発音が太陽を背負って向かって来るっ!


 ……無理ッ!!!


 玲鷗れおんですら、一歩も動けずに砂の上に立ち尽くしている。


 ビーチに引いたラインギリギリのところで、砂煙が立ち昇ってる……


「って言うか……ていうかズルくない!?ゴーグルおじさん!!」


 幸子さちこがスカイブルーのジャージを砂浜に脱ぎ捨てて体操着の袖をまくった。


「何がだ鑑原かがみばら三女さんじょ。これはれっきとした作戦だ。いけ!雨沢あまさわ!!!」


「ジュン氏は端っこに居て何もしてないジャンっ!……くっ……でもこのままじゃ、負ける……」


 幸子さちこは悔しげにコートの向こう側を見つめる……。


 アタシたちのコートは逆光——!


 そうちゃんの太陽を背負ったスーパースパイクをアタシたちは全く拾えないでいた。


 アタシは知っていた……


 あれは、バレーボールじゃない。


 そうちゃんとシュウジがハマっていた古代のドッジボールのアニメの技……をビーチバレーにアレンジしたわざだ!


 ……という、メカニズムが分かっていても、取れないものは取れない!!!


「勝負に身内も何もないのさ……」


 そうちゃんは鋭い瞳でコートのこちら側を見て、ボールを投げ上げた。


 ——来る!!!


 ズシャァァアアア!!!


 玲鷗れおんとマックスが砂に倒れ込む!!


 アタシは一歩も動けない——!!!

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