214

 音楽と技術の授業が終わった。


 HyLaハイラのスタッフの人たちに任せっきりになってるのが申し訳なくて、強化シリコンの加工や設計、回路の仕組みを学んでみたかったから。

 (音楽は単に趣味。3組の人は一人もいなかったけど、1組と2組の人が何人かいた。意外なことに、幸子さちこはいなかった)


 かえでの色のスカーフに元気を貰って、少しはフレンドリーに接することが出来たと思う。アタシから挨拶もしてみた。

 ……凄い緊張したし、何だか疲れたけど……。


 でも一日目でこれは上出来だと思う。


 疲れたけど、満足した気持ちでHRホームルームに戻る。


 教室の窓から夕陽が差して、マンハッタンの街が金色に輝いてる。


「綺麗……」


 思わずそう呟くと、糸井いとい桃菜ももなの視線を感じる。


 な、なんか変だったかな……。


 咳払いをして、教科書を整理してリュックに詰め込む。


 黒い、シンプルなリュックだけどキーホルダーでも付けようかな。など思ってると、篠坂しのさか先生が淡々と明日の体育のことで説明を始めたからメモしなきゃ!


 焦ってシャーペンを滑らすと、糸井いとい桃菜ももなは既に真剣にメモを取っている。


 HRホームルームが終わって、夕陽が落ちるのをしばらく眺めた。


 ピンク色、朱色、セピア色。


 だんだん宝石みたいになってく夜景。


 気づくとジュンが居なくなっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る