薄明のハイドロレイダー

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　古池や　蛙（かわず）飛び込む　水の音

「私はこの句が好きです」

　緑色の猫の瞳のピンを、ショートヘアーの前髪でキラキラさせて、キラキラの瞳で。

　アタシの右隣の糸井（いとい）桃菜（ももな）がキラキラの瞳で言った。

　真っ直ぐに前を向くその瞳は、どこかで見たことがあるようで、初めて見るようでもあって、アタシは糸井（いとい）桃菜（ももな）が何故か気になった。

　アタシと同い年の中学1年生。

　ここにいるってことは、この子もレイダーの搭乗者（パイロット）なのだ。

　背は、アタシより小さいくらい。

　小さな頭と小柄だけど運動が得意そうな体は、整ったアンドロイドのようにも、どこか暖かそうにも見えた。

　不思議な子……。

　アタシは糸井（いとい）桃菜（ももな）の挙動に気を取られて、担任がアタシの名前を呼んでいることに気づかなかった。

「（みっちゃん！）」

　宗（そう）ちゃんに呼ばれて、はっと我に返る。

「どうした、星ヶ咲（ほしがさき）」

　担任の篠坂（しのさか）先生は、綾野（あやの）先生と違って、どこか虚で淡々としていて、何を考えているのかわからない。

　……HyLA（ハイラ）の職員は、何かしらIOP消失に関わった人が多いと聞いて、無理もないと思う。

　アタシは丁寧に詫びた。

「……すみません」

　篠坂（しのさか）先生は顔色ひとつ変えず、怒るでもなく、たぶん、さっきした質問を繰り返した。

「糸井（いとい）が言った句の作者と解釈は？手短に述べよ」