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 忘れられない痛み

 消えゆく悲しみ


 悔しくも嬉しい

 夢の星の輝き……ラララ……


 空はどこまでも晴れて

 振り向いた時 寄り添い


 ひとりでも前を向き

 未来へ 希望の 彼方へ


 時、記憶重ねて

 思い出す 沢山の日々


 笑顔 ふれあい

 心合わせて


 前を向き

 未来へ 希望の 彼方へ


 ルールー……



 切ないピアノの調べが、体育館に響いている。


 嬉しい思い出が溢れ、ハーモニーの余韻が消えない。


 アタシたちは出口みらいに向かう。


 保護者たちの拍手と、5年生、4年生のリコーダーの音色。


 アタシたちも、去年と一昨年、練習しやったっけ。今年はシュウジが練習してた、5億年前のロックバンドの切ない名曲。


 出席番号1番の綾瀬あやせから、綾野先生たんにんから祝辞をもらい、静かに去っていく。


 ……これが、長いんだよね……4、5年生は最後の一人を見送るまで、繰り返し、繰り返し、リピートする。


 確か、なるがままに……というようなタイトルの繰り返し流れる旋律が綾野あやの先生の涙に混じって体育館に響く中で浮かぶ。


 みんなで思い出を重ねたこと、辛かったこと、それでも生きていること。


 笛の音はあまりにも綺麗だった。

 

 アタシの番の時にはもう、綾野あやの先生は頷くだけで、もう何も言えなくて、アタシは精一杯、一言だけ言った。


「ありがとうございました」

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