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「明日ッ!?痛っ!!」


 驚いた拍子に体がきしんだ。


「うん。大丈夫だよ、今日起きそうかな〜とか思ってたから、選んだんだ。シュウジと、みっちゃんの服」


 センスの良いグレーのワンピースが、ライティングデスクの横に掛かっていた。


 胸には銀色の薔薇バラのブローチ。


 とても、綺麗だった。


「アタシ、一週間以上寝てたんだ……」


「辞めたい?」


 そうちゃんは、再び訊いた。


 HyLAハイラに関わることを……。


 卒業までの貴重な時間。


 本当はあったはずの、時間。


 アタシは傷つき、眠って過ごしてしまった。


 虚無のような静かな気持ちが訪れて、でも明日には間に合った……とは思えなかった。


「アタシが辞めたら……辞める?」


「辞めないよ。みっちゃんが辞めてもね。でも続ける限り、一緒に戦う。同じ気持ちで。たとえ別々の現場だとしてもね」


「なんかシュウジもそんなこと言ってた。離れても守るって」


「なんと生意気な!でも俺は少し違うよ。守られたいだけじゃないでしょ?みっちゃんは」


 生きていてほしい。元気でいて欲しい。


 そうちゃんとアタシは同じだ。


「お兄ちゃん。……って呼んでもいいんだぜっ」


 そうちゃんはまた、ぬいぐるみを狙い始めた。


「……思ってるよ」


 アタシは帰って来た母が買って来た桃缶を食べた。


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