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純之助じゅんのすけ君!」


 何かを企んでいそうな、黒い瞳。


 ……いな、きっと裏表のない、健やかな瞳。我の大嫌いな瞳だ。


 u-coユーコとの夢のようなニ週間はあっという間に終わってしまって、我はハイドロレイダーの格納庫の一角の研修スペースを卒業して、搭乗者パイロットたちがトレーニングを行う、トレーニングルームでいけすかない子どもに見つめられていた。


 星ヶ咲ほしがさき萩爾しゅうじ……学校に一人はいる、我の最も嫌いなタイプ。


 我のサポート役、u-coユーコに親しげなこともいけすかなかった。


 我の研修は単純シンプルだった。


 放課後、木曜、日曜日を除いて緋色の男が待ち伏せ、及び、拉致。


 灰色のウテナに連れていかれる。


 そこからはひたすら階段登り。


 やっとの思いで白い扉を開けると、あおい格納庫でu-coユーコが待っている。


 レイダーは、全て揃ってる日も、何機かいない日もあった。


 u-coユーコ研修レクチャーは知性に満ちていて、我はこの二週間で、レイダーの今分かっている機密の全てを吸収したと思う。


 我がこの機密を利用したり、漏らしたりしたらどうするのか、と過った瞬間に、


HyLAハイラを甘く見ないことだ」


 と緋色の男が言った。


 u-coユーコは毎日、ホットココアも淹れてくれた。だが、会話は一度たりともしなかった。我は渡辺わたなべ以外と会話はしないのだ。



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