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「この扉を開けるといい」


 緋色の男は、階段の先を指し示した。


 物々しい仄暗いウテナに不似合いな、まるで中学校の屋上に繋がるような、簡素な握り玉式の真っ白なドア。


 この先には、絶望が待っていて欲しい。


 もう、終わりにしたい。


 孤独ひとりの日々は、もう終わりでいい。


 銀色のドアノブに手を掛ける。


(グッバイ!マイライフ!)


 息を止めて、ゆっくりとノブを回す。


 眩しい光が満ちてくる。


「空……?」


 じゃないのかもしれない。

 

 真っ青なただ広いだけの空間の向こうに小さく……


「!?」


 我は走った。


 太腿フトモモ脹脛ふくらはぎも、変な風に震えた。


 だけど、もしかしたら、ココは……。


「白い……ハイドロ……レイ……ダー……」


 ハイドロレイダーだけじゃない、ブレイズレイダー、ヘブンズレイダー、ナノゲイルレイダー、スターノエルレイダーまで——……。


 繰り返し映像を見つめた、現代に甦ったスーパーロボット、救国の化身——……ホーリーチェリーの開花を阻んだ、あの、レイダーたちがあおの空間に立っている。


 夢にまで見た、我の復讐の対象がそこに居る。


 高さ、333メートル。


 色は、搭乗者パイロットって変わる——……。


 我が駆るとしたら、色は何色になるだろうか……復讐と終わりの狭間に、そんな愚かな妄想がぎった。

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