沈黙のうてな……——放て!白の弾丸

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 相良さがら純之介じゅんのすけ、中2。


 我は今、絶賛困惑している。


 目の前の赤いゴーグルの男。


 我しか知らないはずの空き地の塀に映し出された、小6女子と小4男子の写真。……ん?コイツ知ってるぞ。


 確か、射撃シューティング小学生の部、都大会で優勝した、星ケ咲ほしがさき萩爾しゅうじでは?


 隣の女子は……誰だ?


「彼女はほっしー」


 ぎょ、コイツエスパーか?


 危ない奴が着るようなあかいロングコートなんて羽織って……違う、今、風で……中に白いジャケットが見えた。こいつ、警察だ。


 警察がなんで我を……尾けて……た?


 ダッフルコートの下の、詰襟がじっとり汗ばんで来る。


 我は確かに偏った趣味をしているけど、誰にも明かしたことはないし、実行に移す気はさらさらない。妄想の中で個人的に愉悦に興じているだけだ。


 写真の女子は話しやすそうでややツリ目、小さな口が少々ストライクではあるけれど、流石に小学生には興味がない。それに……


「隣の写真はシュウジだ」


星ケ咲ほしがさき萩爾しゅうじ


 我はこの子どもが嫌いだ。


 平凡な顔立ち……いや、隣の女子に少し似てるかもしれない、話しやすそうで清潔な顔立ち。子どもっぽい、いかにもスポーツが出来そうなベリーショート。

 苦労なく……いや、こういうやつは努力してる。知ってるけど認めたくない。何でも持ってるやつ。

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