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「それで……」


 サブローはゴホンと咳払いをした。


HyLAハイラの現状ですけども、何人かは知ってるかもしれませんが、このHyLAハイラの地下基地は、新宿ではなく、エリア栃木・セクション佐野にあります」


 そうだったのか……確かに、藤ヶ谷津ふじがやつ人太郎じんたろう、IOP初代大統領の出身はエリア栃木。


 何度か荒れ狂うAIdディストレスを討伐したし、観測レーダーの流れもエリア栃木に集中しがちだ。


 地下基地の中では、住み慣れた新宿の空気を感じていたけれど。


「そして……雪子せつこ君、由子ゆうこ君」


「「はい」」


 シンプルな皮のソファーに座っていた雪子せつこさんと、造りの良い木製の椅子に座った由子ゆうこさんが立ち上がって演台に登った。


「ミカちゃん、皆んな、このところ、搭乗を任せてしまってごめんね」


「いやっ別に……」


 雪子せつこさんに名指して呼ばれ、ドキっとしてしまう。

 っていうか、HyLAハイラスタッフは、本業に従事しながら協力している人が結構多い。


 雪子せつこさんと由子ゆうこさん(と幸子さちこもそうだ)はスポンサー訴求の広告塔でもあるから、年末年始、大忙しだったと思うし、実際あらゆるメディアに引っ張り凧だった。


「ミカちゃん、皆んな、私たちは今回、交渉と説得を行なって来ました」


 由子さんの笑顔にくらっ、としつつも、アタシは姿勢を正した。


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