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「部屋戻ろっか」


 そうちゃんのどこか気の抜けた顔は久しぶりな気がした。


 そうちゃんの心が、今本当に救われているのか、分からない。


 だけど、冬の月明かりは優しくて、木の葉がかすれる音も、しんしんと冷たい風も、どこか穏やかだった。


「お刺身のツマ、頂戴」


「えー、今日は兄も食べたい気分だからなー。半分ね」


「5分の3」


「絶妙〜、みっちゃんやるなぁ」


 学校の帰り道、図書館の帰り道、バレエ教室の帰り道を思い出した。(バレエはアタシはすぐ辞めた)


「楽しみだね、ごはん」


「そうだね。みっちゃんの白飯も好きだけど」


「やたら食べるよね、ウチの男子たち」


「成長期ってヤツ?」


 アタシは毎日の米研ぎを思い出してため息を吐いたけど、温泉に入って、はしゃいで、寒くて静かな月を見たら、なんだか色んなことが少しいい思い出みたいに思えた。


 トントンと階段を上がって、灯りが漏れているふすまを開ける。


「寛ぎ過ぎ!」


 母と幸子さちこ、シュウジに思わず叫んだけど、テーブルに並べられた旅のごちそうを前にして、アタシはわくわくしていた。


 いつのまにかゴーグルをしっかりと付け直したそうちゃんに促されて、ツマがきもち多めの座布団に座ると、幸子さちこが隣の座布団に飛び込んできた。


「早く食べよー☆」

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