84.5 Holy night――きっと、君は……
「来たッ☆」
「ちょっと
聖夜、
灰色の空の下を、三つの人影が連なって歩いて来る。
「プッ☆サブロー氏、かなり怪しんでるネ……☆」
「だから聞こえちゃうってば……!」
でも確かに……
折角なら、サプライズにしよう……
誰かがそう言いだして、止める人は居なかった。
作戦はこう。
クリスマス・ナイトも残業予定のサブローを
アイマスクを装着(サングラスの上からかけられるやつを探すのが苦労した……結局、
サブローが目を覚ますまでは
目を覚ましたら、クリスマスの怪盗に扮した
ウチのアパートのスチール風の階段はカンカン音が鳴ってしまう。
だからシュウジと一緒に、昼間、通り道にフエルトを張った。
「段差になっている……。ここを上がるんだッ!」
「ヒィッ!」
クリスマスの怪盗に扮した
「……ブッ!……ププ!!!!☆」
「ちょ!幸子!!!」
色んな意味で!
「とにかくアタシ……知らせてくるね!」
「オッケィ☆」
アタシは
(実際は、地下基地内のコピーだけど)
でも皆んな、楽しそう……。
「もうすぐ、来まーす……」
アタシは小声で合図を出して、自分も位置に着いた。
カーディガンのポケットから、クラッカーを取り出す。
「ヒィッ!……ヒィッッ!!!」
パチ、と電気が消されて、部屋が暗くなる。
全開になった二つの小さなサッシから、夜の風が入り込んで来る……。
フゥ、上手く行きますように。
「ヒィッ!ウヘェ!!!」
サブローが玄関の段差に
でも……!!!
小さな闇の中に、沢山の人の気配……。
「っヒッ!!……誰だ……お前たちは!!!目的は何だ!こんなことをしても俺は何も喋らない……例え、死んでもな!」
……最初あれだったけど、結構勇敢なサブロー。
「くっくっく……お前はもう、我々の手の中さ……なぁに、時間はたっぷりある」
最後に
パチ、とシュウジが電気を点けたのが、合図――
『『『一、二、サブロー!!!!!!!』』』
パァン!パン!パン!!と爆発音が鳴り、サブローが身を低くした!
「……えっ!?」
キラキラのメタルテープ、くす玉が割れる……
笑顔と笑い声が溢れる
ちょっ!
「おめでとうございます!サブローさん!!!」
シュウジが、高菜おにぎりが沢山乗った大皿を差し出した。
口笛……拍手……笑い声……おめでとうという声……
沢山のキラキラが溢れる。
「えっ……えっ!?……エェーーーーーー!????」
周りを見回して、サブローは肩の力が抜けたみたいに、声を上げた。
「えっへへ☆サブロー氏、外もっ見てみてー☆」
違う。あれはサブローのために集まった人たちの、ホログラムモバイルの手作りのイルミネーションだ。
おにぎりの大皿を持ったまま、サブローはよろよろと外廊下に出た。
なんか、こっちも感動してきてしまう。
「メリークリスマス!!!アーンド!サブローおめでとー!!!」
知らない女の人の、でもなぜか、優しくて知っているような女の人の声が、空き地に響いた。
現
今日の記念に、サブローの同僚の人たちが探して来たそうだ。
歓声の中で、アタシはサブローがどんな顔をしているのか見たくて、声をかけた。
「お皿、持ってよっか?」
「に……
「そ」
サングラスのせいで、サブローがどんな顔をしてるのかは分からなかった。
でも、たぶん、笑ってる気がした。
「ミカミカ!☆見てぇ!空き地のところ!ポテサラツリーだって☆☆☆」
「えっ凄ッ!!ちょっ引っ張ったら危なっ……楽しんで!サブロー!わぁっ」
「うん!ありがとうッ」
こんなパーティー初めてだし、楽しい、嬉しいの気持ちが溢れて、幸せな気持ちになる。
振り返ると……ウン、サブローは皆んなに囲まれて、きっと笑顔だ。
仲間……友だち……家族。
一年に一回くらい、綺麗な景色の中で、思い切り楽しんでもいいよね。
「
「シュウジ。あれ?
「たぶん、あそこかな」
空き地の真ん中に、大きなクリスマスケーキが運ばれてきたすぐ真下に鑑原三姉妹が見えた。
もうあれって、サブローの誕生日とか関係なくなってるけど、楽しそうだからいっか!
「ニャン」
シュウジが背負ったリュック型のキャリーから、
「ミカ、シュウジ、食べてる?」
「母!」
アタシたちは母からケーキの乗ったお皿を受け取った。ウマっ!
少し冷たい夜の空気。
でも皆んなの声が、灯りが、思い出が……
暖かい気がした。
「えっ……?」
キラキラ、光る。
「……雪……だね」
シュウジが空に触るように、手を上げた。
「……綺麗」
今日のエリア新宿は晴れ。
12月に雪が降ることなんて無い。
「ホワイトクリスマスだね」
地下基地の天気は自由。
特別な日、みんなへのご褒美はいくらだってあってもいい。楽しもう、特別な日を。
「頑張ったよね。アタシたち」
「うん、お疲れ様。来年もよろしく!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます