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「ねえあね、どう……違うの?」


 小学校4年生の弟が尋ねた。


 AIdエイドの馬と、ディストレスの巨大な馬。


 大きさは違うけれど、見た目は一緒だった。


「消す……の?同じなのに」


 分かってる。アンタにはできない。


 アンタは……優しい。


 予期できなかった。

 飼われた馬がいるなんて……。


「アタシがやる!」

「いや、俺がやる!!」


 玲鷗れおん……!


 手のひらにパァン!という衝撃を受けて、ハイドロレイダーアタシは草原の隅に投げ飛ばされた!


「そこで見てろ!」


 ディストレスに蹴られて、ナノゲイルレイダーの装甲がボロボロになっていく!


 ダメ!倒される……!


「シュウジ!」


 ……捻り返した!


「だけどな!シュウジ!!」



 あのディストレス……速い!



「今隣に居る家族より大事なもんてあんのかよ!」


「シュウジ!!」



「何のために生きるのか……」


 アタシたちが消しているもの……



「俺のため!仲間おまえらのため!!!」


 それは……



「俺の道にはシュウジ、ほっしぃ!仲間おまえらがいる!」


玲鷗れおん君……)


「立ち上がれ!甦りやがれ!!!」


 でも!


「ディストレス!!!!」


「ナノゲイル!!!!!!」

「バーキング……」


 逃げたくない!!!


「ドロップ!!!!!!!!!!!」

「「アロー!!!!!!!!!!!!」」


草原に、緑の風が舞い降りた。

晴れた日の風は迷子のような巨大馬ディストレスを誘った。


 そして薄明光線はくめいこうせんが降り注ぐ……




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