15

「僕は家族のため、世界のために、ハイドロレイダーに乗りますヨ」


 ますヨって何だ。

 アタシは知っている。

 弟は、ロボットが好きだ。古代のアニメーションや、古代のゲームの復刻版に、食い入るようにハマッていた時期がある。


 どちらかというとアウトドア派な弟のこもりっぷりに少し心配したけど(本来、引きこもりはアタシの専売特許だ)考え抜かれたギミック、目を奪われるエフェクト、熱い世界感に惹かれる気持ちはわからなくもない。


「ていうか、白炎びゃくえんの炎とか、なんなわけ……?水の力っていってたじゃん。俺とかも聞いたことないし」


薄明はくめいの光が白炎びゃくえんだよ。ぶつけるって言ってたから、炎のほうがかっこいいかなって思ってさ」


 確かに、思い返すと薄明光線はくめいこうせんが降り注ぐさまは、白い炎の矢が降り注ぐようだった。

 けど言っときますけどアタシは、普通に乗りますからね。


「あとで教えてあげるから姉もやりなよね」


 いや、やりませんからね。


「ほい」


 アタシの前に、猫のタンブラーが置かれた。


 カフェラテの匂いが、気持ちを落ち着かせてくる。


「母も、ほいよ」


 ちゃぶ台にコーヒーが三つ並ぶ。


 ふぅ、と吹いて、カフェラテを飲む。


 この、ちょうど良い苦みを出せるのは弟だけだ。

 母も満足そうに息をついていた。

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