08

「大丈夫、まだ生きてる」


 植込みの隙間に身を隠し、アタシたちは大猿を見つめていた。


かえで……」

「大丈夫だよ、どっかに連れて行くみたいじゃない?」


 確かに、殺すつもりならとっくにやっていると思う。

 アタシは息を吐いた。


「どうするの?」


 シュウジは小学生ながら、射撃の名手だった。

 この間、都大会にも出て、小学生の部で優勝したのだ。

 でもこんな小さなサイコプラズマワルサー護身銃で……。


「……あれは、猿でしょ。爪の間を狙う」

「は!?」


 鳥肌が立つ。


「……アンタ、鬼!?」

「し、しょうがないでしょ。かえでが飛び降りたら、確保してね」

「わ、わかった」


 弟は、きっとやる。


 ピュスイッ


 乾いた音が鳴って、ワルサーの銃弾が大猿に向かって飛んだ。


 当たった!!!!


 大きなうめき声をあげて、大猿がかえでを取りこぼ……さない!


「ダメ!あいつ逆の手でキャッチした!」


「どんどん行くよ!」

「待って!」


 バタン!


 黒塗りの車のドアが勢いよく開いた。


「「はは!?」」


「ミカ!シュージ!!母もよくわかんないんだけど、この車に乗って!」


「はぁ?今それどころじゃないんですけど!」

「いいから!」


 母の腕をほどこうとする私を尻目に、弟はすでに車に乗っているッ!?


「ちょまっ!」


 車から現れたサングラスの男に、私は無理やり車に詰め込まれた。

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