02

 炒飯チャーハンのお皿を洗って、

 アタシはかえでの優しいグレーの、ふわふわの背中を撫でた。


 かえでが居なかったら……。

 アタシは、アタシたちは生きていけない。


「お姉ちゃん、これは猫じゃない?」


 まだアタシをお姉ちゃんと呼んでいたシュウジ。

 小さい頃の記憶。


 シュウジの手のひらの上には、

 小さなけもののような……

 消し炭のような、かえでが居た。


「これが猫!?……嘘ッ」


 アタシは動揺していた。

 生命とAIの混血。人類の悲嘆。

 これは野生のArtificial Intelligence of distress《悲しみの人工知能》ではないだろうか。


「……猫って言うのはさ!この絵本みたいなさ、あっ」


 消し炭のけものは、物凄い力でアタシたちの絵本を叩き落とした。


「シュウジ!噛まれるよ!!!」

「だ、大丈夫だよ!!!!!!」


「大丈夫だよ……」


 弟は誰からも好かれた。


「大丈夫だよ。ほら、ここのところに耳があるでしょ」


 弟が指差した先に、くしゃくしゃの塊の小さな一部に、三角の小さなぴらぴらがピコピコと動いていた。

 弟の小さな、短い手。

 包まれたかえでは、次第に落ち着いた。


「絵本に出てくる猫と同じ、可愛い猫だと思うよ」



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る