その猫は、本当に話した

saito sekai

奇妙だったり、SFだったりの物語



私はS子。早く専業主婦になりたいなぁと思っている。それでもって、ネットの出会い系サイトに登録。少し~だけ加工した顔写真を載せた。するとすぐに候補者が数人現れて、その中で一番良い条件のMという男と付き合うことに。私達は話が合うし、なかなか良い感じ。お互い今度会おうということになった。


会ってみると、写真よりもずっと素敵なMに夢中になった。私は写真を加工したことに、気が付かない彼に安心を覚えた…


3ヶ月後、私達はスピード婚をして、周囲を驚かせた。新婚旅行のハワイ初日の夜、シャワーを浴びたMの顔を見て私は、驚愕を隠せなかった!なんと全く違う容貌なのだ!


彼は言う。「だって、S子だって偽っていたよね。僕たち気が合っているから関係ないでしょ?」


そんなスタートだった結婚生活だったが、終わりは呆気なく来た。夏のラジオ体操に参加したMは、突然UFOに連れ去られたのだ。近所の人々が家に押し寄せて、その様子を興奮して語った。



Mが行方不明になり、7年経ち、相続が開始された。Mはなかなかの資産を残してくれたせいで、これから何不自由ない生活だ。思えばハネムーンの夜から、彼の事を愛しているか疑問の私だった。だから悲しくないし、もしかしたら最初からMは宇宙人だったのでは?だから顔だって巧みに変えられた?想像すると、なんか可笑しささえ覚える。


ある日、ランチをして最新の服を買った私は家に向かって歩いていた。前から猫がやってくる。


(確か、あの猫って話すって噂が…まさか…)


私達はすれ違った。すると後ろから声が聞こえたのだった。


「お前は、幸せか?」と。   完

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