ド派手に死のうぜ

鼬リンレ

第1話 華麗なる博打師ファイン様の日常

 近い未来のある朝、世界はぶっ壊れた。


 地は割れ、大陸の大部分は海に沈み、未知の化け物が彷徨くようになった。


 だが。


 だが、である。




 一般人にそんなことが関係あるだろうか?


 結局、どんなに大きな事が起こっても俺みたいな小市民は、起きて飯食って寝るだけである。


 環境がちょっと変わったところで、根本は変わらない。




 そんなわけで、俺は大事変から数年後の今、いつも通り飲み屋で知らない奴と話をしていた。




「よお、ファイン。また飲みすぎてねえか?」




 ファインと言うのは俺の名前だ。本名と掠りもしないが、気前がいいこの通り名は結構気に入っている。




「おめ、馬鹿野郎。こんなの呑んだうちに入らんっちゅーの」




 俺は知らねえ馬鹿野郎のツルツル頭を叩いた。


 にしてもツルツルだな。ワックスでもかけているんだろうか。




「おい馬鹿はおめえだ。早くそのガラス玉を離しやがれ、弁償する金なんて持ってねえだろ」




 俺は素直に従った。


 ふむ、たしかに落ち着いてみるとやつの頭だと思っていたのは飲み屋のインテリヤ代わりに置いてあるガラス玉だった。




「ここのガラス玉はずいぶん、人の頭に似てるんだな。間違えちまったよ」




「ガラス玉が頭に似ていてたまるかよ。酔いすぎだ。ていうかオーナー。なんでこいつに酒出したんだ? めんどくさくなるのは知ってんだろ」




 俺はオーナーの肩に腕を掛けた。




「オーナーは俺とズッ友だからな!」




「お前と友だちになった覚えはない。あと触るな、酒臭い」




 オーナーは灰色のネコミミを嫌そうに動かした。




「はあ、おいそんなことよりファイン。例の話だが……、今日はやめといたほうが良さそうだな」




「何を言うっ。お前、ぜんぜん大丈夫だ。このまま話せよぉ」




 知らねえバカ野郎がまた大きくため息をついた


 借金取りが連れきたこの男によると、大きな儲け話があるらしい。

 今日はそれを聞きに来たのだ。




「じゃあ、話すが、ここから北に……」




 俺の意識は途絶えた。



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