頭痛にコーヒーを、空腹に痛み止めを

モリアミ

頭痛にコーヒーを、空腹に痛み止めを

 兎に角頭が痛い、ここ最近ずっとそうだ。ディスプレイとにらめっこするのを止め、少し息抜きした方が良い。丁度、前回の休息から2時間30分49秒が経過している。2時間に1度の休息は管理部も推奨していることだ。だから、コーヒーを飲みに行った方が良い。今はこれ以上、頭を使いたくはない、そういう気分だった。静かに立ち上がりカフェテリアへ向かうと1人だけ先客が居た。オニールだ。

「珍しいね、君がここに来るの、始めて見たよ」

 少しの感情も無い声でオニールはにこやかに話しかけてくる。

「そうかい? 単にタイミングが合わないだけじゃ無いか?」

 僕の返答にオニールは首を振る、確かに僕が休息を取るのは珍しい部類だ。

「ここ数日、殆どの時間ここに居るよ、でも、君と会ったのは始めてだ。もう少し休んだ方が良い」

 確かにその通りだ、でも、丁寧に仕事をするなら時間はいくら有っても足りない。

「オニール、今月のノルマは?」

 僕はオニールの顔を見ないようにして話す。見なくてもどんな顔をしているかは分かる。

「後3人マークすれば終わりだよ、大丈夫、無職で評価の低い奴が何人か居る。それに、1人はもう決まってるんだ」

「そうか」

 それから数分は無言で時が流れ、丁度9分14秒経った頃に、僕は仕事に戻った。そこから2時間34分03秒、ディスプレイとにらめっこをした。画面の中のリストをフィルタリングしては、比較してノルマ分のマークを付ける。今月は10人、残りは後8人、考える時間はまだまだ有る。名前、性別、生年月日、住所、家族構成、職業、健康状態、生産性、倫理評価、社会性、思想傾向、etc、etc。AとBを比べては低い方にマークを付ける。そいつがどうなるか僕は知らない。次の月にはリストから消える。最近はニュースだって見ては居ない。僕は参考の為にオニールのデータを呼び出して、別のデータと比較する。そいつにマークを付けるのは、まだ先の事に成りそうだ。そんなことで時間を浪費していたからか、不意に胃痛に襲われた。思えば昼食も食べて居ない。きっと空腹のせいだろう。僕は何時も通り痛み止めを飲み込んですます事にした。それでしばらくは大丈夫。

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