第6話 あっさり
麗奈もいる状態で契約についての説明をされるのは心強い。
一人だけだと、強くやっぱり言われるのではと警戒したと思うけれど。
紹介者である麗奈が同席してくれたことで、私の不安は一気に緩んだ。
そして担当の施術師さんから今回来てくれたことのお礼。
そして麗奈には私を紹介してくれたことのお礼の言葉があってから。
麗奈が事前に言っていた、未来のシミが見えるというちょっと怪しい器械にはいると、赤外線なのか? 私の顔にうっすらといくつかシミが浮かび上がった!!
「うわっ」
これはヤバいって思った。
頬にポツポツとそばかすのようにシミが浮かび上がった。
その後で、今見たようなシミが表面に出てこないように。エステで取り扱っているという化粧品ラインナップの説明をうけたけれど。
化粧水1本が6000円、乳液6000円と言われると、もう私では買えない価格だ。
流石エステ価格。
「一応説明する前に、契約するものになるので、こういった説明を未成年相手にしちゃうと問題になるので。事前に学生証を確認させていただいたのですが。18歳以上かつ、高校は卒業されているってことでお間違いないですか?」
なるほど、しっかりしてるんだ。
というか500円だもんね。
1万円とか言われると無理だけど、500円なら年齢ごまかして最初の1回だけでもっての紛れ込んでもおかしくないわ。
何の疑問も持たずに、保険証か学生証を提示してくださいに従ったけれど。
まだ未成年の高校生がこういうところにくると問題になる場合もあるもんね。
「月に1回でも、エステに通うだけで、お肌のメンテナンスになりますし。今は通常だと1回12000円かかるところ。コースで契約をしていただけると、2回分お得な12回で12万円になります。今日紹介してくださった立花様もこの契約をされてますよね」
「そうそう、24回コースのほうがお得だったんだけど、流石にちょっとそれだけのお金は厳しくて」
麗奈はそういって笑った。
「学生でってなるとかなり大きな額ですからね。コースのどれかにご加入していたきますと、紹介キャンペーンとして、連れてきてもらったお友達も500円。紹介者様も一緒に500円で施術を受けられるので。お友達を誘ってもらえると、コースは12万かかちゃいますが、500で+αだからお得かなって感じで提供してます」
誰か人を連れてくれば、500円でまた受けれるってことだけれど。
それにしても私にすると12万は高額。
「12万はなかなか……」
エステちゃんとしてすごいなと思ったけれど、私は流石に麗奈のように12万は出せない。
「一応ローンで分割もできますし。加入自体今ここですぐ決めていただかなくても大丈夫です。もし、加入したいなってことがあれば、お手数なんですがまた来店してもらって契約書にサインをもらってって感じでできるのでご検討くださいね」
そんな感じで、最初にいっていた通り10分ほどで勧誘はあっさりと終わり、化粧直しをして受付で本当に500円を支払って滞在時間1時間ほどでお店を後にした。
今ここですぐに決めなくていいこと、もし入りたければ、後日入りたくなってから再訪問すればいいと言われて私はかなりほっとした。
私たちが会計を終わった後も新しく女の子の二人組が紹介なのだろう、やってきてかなり来店客がいるようだ。
その後麗奈とご飯を食べて、エステよかった~紹介してくれてありがとう~って話をして私たちは解散した。
その3日後。
エステにいってまだ日も経っていないというのに。
私ときたら贅沢なことに、今度は古屋さんとホテルエステを受けるべく待ち合わせをしていた。
私は麗奈と初エステを先日したから、2回目なら前よりも緊張しないぞとおもっていたんだけど……
待ち合わせ場所が施術を受けるホテルのロビーってこともあって、ホテルの顔ともいえる豪華な作りと調度品。
私たちが旅行の際に使う様な、値段が手ごろなホテルとはロビーの華やかさだけではなく、ロビーにいる客層の違いに気圧されていた。
露骨なブランドのバックを持っているだけではなくて。
なんていうか着ている服のシルエットがきれいで、プチプラの私とは全然違う。
古屋さんは先に来ていた。
「ごめん待った!?」
「時間通りだよ。私がただエステ楽しみで早くきちゃっただけ」
その気持ちはわからないでもない。
なんていうか、この前の500円エステとは違い。
ホテルのこのロビーの様子からしてかなりテンションが上がる。
「石井さん。後日レポートの提出があるってことも絶対忘れないでね」
「わかってます! それにしても、ちょっと私ここ場違いかも……しいていうならもっときれい目な服装とかしてくればよかった」
「わかる。なんか客層が違うよね……」
そういって、私たちはエステのあるフロアーに移動した。
そしてここから、私は猛烈な違和感の連続が始まったのだった。
「うわっ、ロビーもすごかったけれど。エステの入り口もすごいね」
いつもの余裕のある感じではなく、古屋さんもかなり緊張の面持ちを浮かべて、今の状況にテンションが上がっているのが隠し切れないようでいつもよりもワントーン高い声でそう言われた。
反対に私はあれ? あれ? って頭の中は疑問がいっぱいで、ちょっと下がったテンションで。
「……うん」
と答えた。
場所がちょっといいホテルの中ってこともあるんだけれど。
ぜんぜん違う……入り口からして。
こっちのほうが明らかに500円エステとは比べ物にならないほど豪華なのは一目瞭然だった。
ここの黒の重厚感ある受付にくらべると、麗奈には悪いけれどこの前のところはあまりにも質素だったのではないだろうか。
受付のおねえさんも30歳を超えているのだと思うけれど、ピシッとしていて落ち着きがある。
「予約した古屋です」
「お待ちしておりました。ご案内いたしますね」
そういって、受付からお姉さんがでてきて扉をあけて驚いた。
ふんわりとした絨毯。
部屋には先ほどは言ってきた扉とは別に正面に一つと、おねえさんが背にする方向に1つ。
他に待っている人と会うことも、この部屋で話している声も隣には聞こえないだろう完全な個室だった。
落ち着いた暖かな色味の証明が部屋を照らし。
部屋の隅には、観葉植物とスチームがたかれいい香りがする。
そんな部屋の中央には、黒と赤で統一されたテーブルが一つと向かい合うように椅子が2、1で置いてあった。
座るように案内された椅子は見るからに高そうだ。
「本日はご予約いただきありがとうございます。ハイビスカスティになります」
そういって、受付にいたおねえさんとは別のおねえさんが出てきて、私たちの前に御茶をだした。
ハイビスカスのお茶。
おしゃれな響き。
思わず古屋さんと顔を見合わせた。
本日の予約内容の確認、ボディ60分で間違いないかってことや、簡単な問診とパッチテストをハイソなお茶を飲みながらこなしていく。
私たちは完全に借りてきた猫状態だ。
あっ、私未成年じゃないけれど。年齢的に怪しい層だからと。
鞄を漁って、学生証を取り出すと。
お姉さんは不思議そうな顔をして小首をかしげた。
「えっ、石井さんなんで学生証出してるの?」
でも、前のエステだと年齢確認ってと思ったけれど、どうやらここはそれが必要ないようで、私は恥ずかしくて。学生証を慌てて鞄に突っ込んだ。
そして一通り終わると、正面の最後のドアが開かれた。
一面の大きな窓からはホテル高層階だけあり、見事な街並みが見える。
その前に置かれた2台の施術台。
私は言葉を失った。
部屋にはさらに簡易なシャワールーム、トイレそして、服や荷物をおいておくクロークのようなものがあり、どうやらそこで、貴重品を鍵のかかるロッカーにしまい。
服をぬいで籠にいれて、紙パンツになって先ほどの部屋で施術のようだ。
「窓は、外からはのぞけないようになっておりますが、窓のブラインドを下げて部屋を暗くしての施術も可能ですがどうされますか?」
そこからは先日のエステはなんだったのだろうか? ってなってしまっていた。
なんとなく、開放感があるままだと、紙パンツ1枚になるのが恥ずかしくて、見事な景色のブラインドを下げてもらい部屋を薄暗くして、リラクゼーション効果がありそうな先ほどからずっとかかっていたBGMがより大きく感じるなか……
いよいよエステは始まった。
人肌に温められたオイルを使われてふんわりと、事前に選んだ香りが優しく香る。
気持ちいい。
気持ちいい、ナニコレ……
受付からして全然違う、部屋の豪華さも。
そして何より、施術が長い。
ボディ60分だから、前のように説明が10分、終わってから10分かと思えば、60分みっちり私たちは揉まれ私は何度も眠りの世界に誘われるけれど。
もったいないのと、これはモニターで後でレポート提出ってことで寝ないようにがんばった。
施術終了後は、部屋にあったジャグジーバスで軽くオイルを二人で流して、二人で座れる洗面台で化粧をして。
夢のような時間は終わった。
「なんていうか、レポートに『すごかった』しかかけないよ」
古屋さんはぽつっとそういった。
私もそれにうなずいたと同時に、頭の中は大混乱だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます