第7話 バイトを辞めた後
古屋さんとは、バイトをお互いやめて。
「バイト仲間のSNSのグループから抜けると、お互い連絡先知らないし、交換しよう」
そう古屋さんから言い出してくれて私たちは連絡先を交換したんだけれど。
なんていうか、グループではなくて、プライベートの連絡先をお互い交換して初めて、私は古屋さんにとってやっとプライベートでも連絡を取ってもいい相手扱いになったんだと思う。
ヨッシー先輩はバイト先で困っているときは助けてくれて、話しの輪に入れないときは私も入れるように気を使ってくれていた。
SNSのグループ連絡や職場での雑談中に『皆でこれしよう』とか、『ご飯いかない?』 とか私と違っていろいろ提案できるヨッシー先輩は、私と個別で連絡先を交換したいと思えば、今までの恋愛で全く行動に移せなかった私と違い、すんなり交換しようと思えば相手に言ったと思う。
バイト先を辞めるときに「また一緒に働けたらいいね」なんてヨッシー先輩が言ってくれた言葉はあくまで社交辞令。
バイトをやめるときに連絡先を交換しようとあっさり言えるタイプだろうヨッシー先輩が、バイトのグループ抜けるから、連絡先交換しよう? と言わなかった相手は……
悲しいけれど、ヨッシー先輩にとってバイトをやめてしまえば、もう連絡を取る必要がない相手だったんだとようやく気がついた。
今後もう連絡とることはないし、いいかなと思ったから。また一緒にとは言ってくれても、次が具体的につながる連絡先は聞かなかったんだ。
私はヨッシー先輩に告白をする前に、先輩の気持ちが今わかってしまった。
バイトをやめたらそれっきりにしようって思う子を彼女にしようなんて思わないもん……
そして私のショックはそれだけではなかった。
リリコちゃん、タッキー先輩、ユズ君、エナさん、ハルちゃん先輩、フユト先輩。かつてバイト先でとっても良くしてもらって、いろんなことを相談して、雑談して、一緒にご飯にいって、遊びに行った楽しい仲間たち。
就活でやめちゃった二人はまた店に今度は客として来てほしいと思っていたし。
それぞれの理由でやめていった子たちも、また事情が落ち着いたら戻ってきて働けたらいいなと思っていたのに……私は誰一人として個人として繋がっていないことに気が付いてしまったのだ。
バイトしている間はSNSでグループとして繋がっていれば、それで困らなかったから。
抜けてしまったらもうお互い連絡先をとる術はないのに、私が自分で動かなかったことも原因だろうけれど。
私あれだけ楽しく働けていたメンバーだと思っていたのに、プライベートで誰一人として繋がってない。
プライベートでの連絡先を誰一人として知らなくて、今はもう連絡先が分からない人と私は仲がいいと今までずっと疑っていなかった。
それが今アレ? アレ? と私って、今の付き合いが終わったら整理しようみたいな人だったんじゃと。
自分自身が春休みに人間関係の整理をしたことで理解してしまう。
バイトをやめる人が出るたびに寂しかった。
私がバイトをやめないのは、バイトをやめてしまうと皆ともう繋がりがなくなるのではってこともあった。
ただ、やめた後も仲良くしていきたいからとプライベートで裏で繋がっていたとしたら……
嫌なタイプの店長のもとで悶々として働かなくても。
また遊んだり、話したりしたけれどプライベートでご飯でも誘えばいいから、バイトはやめていいんだよって答えにたどり着いたかもしれない。
「とりあえず、また会えたってことは、すごくチャンスだよね」
私は自分が大切にしていた仲間に、自分はプライベートでの付き合いはちょっとと線引きをされていたことに気が付いて、ものすごくショックをうけて呆然としている中。
古屋さんは隣で、また好きだった先輩と会えるだなんてすごい、どうやればものにできるかなどと、私のショックはつゆ知らずウキウキと話している。
「いや、私今思うと。ヨッシー先輩とは連絡先を交換すらしてもらえなかったから。恋愛の候補者にも入ってないのかなって……」
ハハハッと乾いた笑いをしながら、自分の立場をわきまえ私は力なく笑った。
ヨッシー先輩に裏切られてたんだと思っていた気持ちは、そもそもな話、最初からヨッシー先輩は私との関係を大事にしていなかったじゃんという真実ですっかりとしおしおとしぼんでしまっていた。
「恋愛候補に最初から入る子なんて少ないよ」
そりゃ、古屋さんだったら可愛いしおしゃれだし、私と違って要領とか世渡りもうまいけれどと言ってしまいそうになるけど。
これを言えば、相手は仕方なしに、そんなことないよ石井さんだって~と慰めるはめになるし。
古屋さんにそういうことをさせて面倒だと思われる→もうプライベートで会うのやめようとは思われたくない私はその言葉をグッと飲み込む。
「そ、そうなのかな?」
そして、心の中ではちっとも思ってない共感を発動した。
「そうそう、それに違う大学の先輩なら。あたって砕けても偶然あって気まずくなることもないし、動かないと何も進展せず終わりだし。動いたことでそれこそうまくいけばラッキーだし。リスクなくいけるんじゃないかな」
古屋さんのいうことは一理ある。
同じ大学の人なら、学校であって気まずかったり。
私が告白したことを他の大学の友達とかに言って回られることも他大学で、かつ共通の知り合いがいないならない。
ただ、これ完全に負け戦だよ。
私連絡先交換もしようと思ってもらえなかった女だもん。
「古屋さんのいうことも確かにそうかも。告白して振られても大学で会うわけでもないし、共通の友人もいないから私が振られたことを誰かに知られるわけじゃないしね」
口ではそういうけれど、私は古屋さんと違うもんってすごく卑屈な気分になっていた。
古屋さんやリリコちゃんくらい可愛かったら、かわいかったらって黒い気持ちがこみ上げちゃう。
「でしょ。それに自分で動かないと恋なんか進展しないよ」
目の前で私よりもうーんとお洒落で可愛くて、要領もいい古屋さんがあっさりとそういうのだ。
「自分から動くって、動かなくても古屋さんなら引く手あまたでしょう~」
つい、自分を卑下して古屋さんあげをしてしまう。
こういうのはよくないと思いつつも、こればかりは言わずにはいられなかった。
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