Don!Don!!クエスト~愉快な勇者さま一行のお気楽救世大冒険〜

トガクシ シノブ

冒険1~はじまりクエスト~

ここは異世界「アークメシア」かつてこの世界では、人族と魔族の長きにわたる争いが続いていた。

激闘の末、人族の勇者が魔族の王である魔王を打ち倒し、この長きにわたる戦いは

無事終わりをむかえた。

その後、人族と魔族は和解し、世界に真の平和が訪れた。それから1000年の歳月が流れ現在、勇者の末裔であり、心踊る冒険を夢見るひとりの青年アークの運命が今、大きく動きだそうとしていた……。




「今日も平和だなぁ~。こうも平和な毎日が続くと本当に退屈だ…。なんかこう、『心踊るような刺激的な冒険』がしてみたいよ……」


青年アークは心踊る冒険に想いを馳せながら、今日もボーッと空を眺めていた。


アーク・ブルーシャイン

輝く青い目と青い髪をもつ青年で、頭のバンダナがトレードマーク。

温和で優しい性格をしており、村のみんなかもら親しまれている。また天性の剣の才を持ち、大陸でその名を轟かす剣術「生涯独身流孤高剣」の免許皆伝を受けている。


「お兄ちゃん!また剣術の稽古サボってる!ママからすべての剣技を会得して、無事免許皆伝をもらったばかりだからって(説明的)、たるみ過ぎよ〜!そんなんじゃママにまた怒られるわよっ!!」


アークの妹アリスは、空ばかり眺めている兄を叱責する。


アリス・ブルーシャイン

ツインテールの髪型と頭に被った手作り帽子がトレードマークの少女。

愛らしい見た目で元気いっぱい、おまけに村一番の働き者でもあることから評判も高い。噂だと彼女のファンクラブも存在するとか…。


「あー、アリスか。ゴメン。今日はもうこのままずっと空を眺めているよ…。そもそもさ~、こんな平和な毎日を過ごしていたら、自慢のこの剣術を活かせる場面がないからさ…。その事に気づいちゃってからなんかもうね、虚しいのさ…」


「今日は?『今日も』の間違いでしょ!そんな姿を見たらご先祖様が悲しむわ!ねえお兄ちゃん、かつて魔王の魔の手から世界を救った勇者の子孫としての自覚をちゃんともちなさいよ!!」


「勇者の子孫としての自覚をもてって?無理だよ。こんな刺激のない平和な日常なんかじゃさ。あー、僕も冒険がしてみたいよ…。この磨きあげた剣術で世界を救ってさ~、ご先祖様みたく伝説になりたいよ…」


「お・に・い・ちゃん…っ!本当に怒るわよ!養ってあげてる私の身にもなってくれる?この甲斐性なし!家から追い出すわよ!いいからつべこべ言わず、早く道場に行きなさあ~~~いっ!!!」


「わかったよ~、じゃあ行ってきま~す」


アークは渋々道場へと向かった。


「遅いぞアーク!…んっ?その様子だと、またボケっと空でも眺めていたな!そんでそこをアリスのヤツに見つかって、口うるさく散々言われた挙句、こうしてオレのところへ来たと…、どうだ図星だろう?」


アークの通う剣術道場の師範カランは、そう言うとニヤりと笑った。


桜喧嘩爛(おうけんからん)

「生涯独身流孤高剣」の第13代目継承者であり、アークとアリスの育ての親。

アークたちの幼い頃に彼らの両親が他界、彼らの両親とたまたま親交のあったカランが、代わりに2人を育てたのである。

異国出身の侍の女性であり、誰もが目を奪われるような美女である…がっ!酒癖が悪く風呂ぎらいで寝相も最悪、おまけにオレ口調の男勝りでぶっきらぼうな性格なため、彼氏が出来てもすぐに破局してまう大変残念な人物である。


「アーク、どうしてそんなにおまえは無気力なんだ?昔のおまえはもっとやる気に満ち溢れていたぞおっ!もう少し勇者の末裔としての自覚をだな…」


「お言葉ですがお師匠様、僕はただひたすら剣術の稽古に明け暮れる退屈な日々に、いい加減飽き飽きしてるんですよ!それより僕は、心踊る冒険がしたいんです!旅先で出会った仲間たちと共に、様々な困難を乗り越え、互いのキズナを深めあい、出会いや別れを通して精神的にも肉体的にも成長し、最後には魔王城で待ち受ける魔王を激闘の末、無事打ち倒すんです!そして平和になった世界で、僕は後世にも語り継がれるような伝説になるんですよおおおおッ!!!」


アークは自分の思い描く理想的な物語(ストーリー)を熱く語った。


「いや〜、相変わらずスゴい妄想力だな!感心しちまうぜえ〜。あー魔王、魔王か〜。アイツは1000年前の勇者…つまりおまえのご先祖様との戦いに破れて、その配下も含めて魔王城ごと封印されたらしいからな〜。ん〜、待てよ、そろそろその結界の力が弱まって、復活なんてこともあり得るかもな……」

 

「本当ですかあっ!?お師匠様!本当に、本当に魔王が復活するんですか!?お師匠様!ねえ、お師匠様!!お師匠様〜〜〜〜〜っ!!!」


アークはカランに勢いよく迫ると、彼女の体を激しく揺らしながら何度も叫んだ。


「きゃっ!?顔が、顔が近い…それにそんなスゴい力で…何度も、そう何度も乱暴に揺らさないでっ!くっ!ああうっ!!……は、離れろ!ええいっ!!このバカ弟子があああああああッ!!!」


カナンが渾身の拳をアークに放つと、その拳は見事に彼の顔面へとクリーンヒットした。


「お、おおおおおおおううう…っ!お師匠様……急に顔を殴るなんてヒドイですよ〜」

   

「自業自得だあっ!この馬鹿力め!まったくおまえは女の扱い方も知らんのか!!ホントにも〜」


「す、すみません…」


(僕がお師匠様のことを女として見たことは、実は1度たりともないなんて、…口が裂けても言えないな……)


「さて、そんな残念童貞君なおまえに、今日もみっちりと剣の稽古してやるからな!覚悟しろよ!!…ついで女の『扱い方』のほうも手取り足取り教えてやろうかあ〜……?ヒヒヒ…」


カランはイヤらしい笑みを浮かべながら、アークにネットリとした視線をおくった。


「いや、結構です!遠慮しときます。僕、お風呂入らない人はちょっと…」


「即答かーーーい!!!なんだよまったく、こんな『イイ女』からの誘いを断るなんてよ!おまえいつか後悔するぜえ?」


「はぁ……そんなことよりお師匠様、さっさとやりましょうよ。僕も忙しいので…」


アークはそう言うとは面倒くさそうに剣を構える。


「ノリの悪い弟子だな〜やれやれ。…おいアーク、なんだそのやる気のない構えは?そんな『へなちょこな剣』でこのオレを本気でヤれると思ってるのか?」


「いや、ぶっちゃけもう僕、お師匠様よりも強いので。それに今さら教わることなんて何もな…あっ!そうだ!『へなちょこな剣』で思いだしましたが、例の年下の彼氏さんとあれからどうなんですか?お師匠さん超メロメロになってませんでしたか『カレ、体はスゴく逞しくて立派だけど、下の剣は超へなちょこなの!でもね、そこがまた可愛いのよお〜っ!愛おしいのよお〜っ!!しゅきしゅき〜だいしゅきい〜〜〜っ!!!』とか言ってましたよね?いや、マジでキッツいすわ色々と…」


とその瞬間!カランに強烈な稲妻が走り彼女の動きが止まった。


「お、おまえ…人が必死に忘れ去ろうとしていることを、そんな風に面白おかしくネタにするなんてえ…っ!ううう…うわーーーん!今回もオレ頑張ったのに〜〜〜!!可愛い女の子っぽく全力で振る舞ったのに、カレの胸キュン☆ドキドキハートを思いっきり鷲掴みにしてやろうと努力だっていっぱい、いーーーっぱいしたのによ〜〜〜〜〜!!ふえええええっ!ヒック、ぐすんぐすん……」


「いや『可愛い女の子っぽくて』とは言いますが、可愛い女の子っぽい人はまず自分のこと『オレ』なんて言わないと思いますがね…あとなんですかその『胸キュン☆ドキドキハート』って?きっつ…、てか『鷲掴み』なんてワードをお師匠様が言うと、超物騒に聞こえますね…本当にやりかねない」


「大っキライなお風呂だってえ〜頑張って週に3回入ったのに…」


「いやお風呂は頑張って入るモノじゃないですよ!てか毎日入りましょうよ!!」


「だいしゅきなお酒だってえ〜我慢してね、週に6日しか飲んでないのに…」


「それほぼ毎日飲んでるじゃないですか〜〜〜〜〜っ!!全然我慢出来てない!自分に甘すぎです!いいですか?今自分の置かれている現実から目を背けないでください!!!(特大ブーメラン)お師匠様、そりゃ愛想尽かされて捨てられたりもしますよ〜」


「捨てられたんじゃないやいッ!捨ててやったんだあっ!決して置き手紙なんかを残して逃げるようにオレの元を去っていったわけじゃないからなあッ!!…もういい、気分悪いから剣の稽古は中止だ。あー、体調不良だ。ストレスで吐きそう。よし!今日はむちゃくちゃ飲んでやるぜえ~っ!!……あんちくしょう、今度逢ったらただじゃおかないからな。両手に鉄の手錠して足には重い鎖をつけて、オレから一生逃げらないようしてやる…。ふふふ、毎日くちづけ責めにあわせてやる……そうだあっ!それがいい!それでそのあとは………」


カランは、物騒なことをブツブツと言いながら自室へと向かう。そしてアークはその場にひとり残された。


「…さてと、じゃあ僕もこれで……」


とその時である!アークの家のある方向から突然狼煙(のろし)が上がった。


「あれは!『自力で解決不可能な大きなトラブル』などに巻き込まれた時に、上げるようアリスに伝えてある『SOSの狼煙』だ!アリスがSOS、…『アリスSOS』だあっ!!」


アークはそう叫ぶと急いで自宅に急行するのであった…。


今アーク・ブルーシャインの運命が大きく動きはじめる!!!(つづく)

 


  

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