可愛い妹は俺にもふもふのアレを被せないと面目が潰れるらしい。そのに
「……うんしょ、よいしょっと!! 千穂ちゃん、このもふもふの着ぐるみはいったいどこから調達して来たの!?」
「えへへっ。それは秘密事項だよ!! 大親友の未祐ちゃんと言えども教えることは出来ないのだ……。なんて!! 嘘だよ~ん。ウチの親はスーパーを経営しているから店頭での福引で使う着ぐるみは倉庫にいっぱいあるんだよ。その中で一番可愛いわんこの着ぐるみをちょっと拝借してきちゃった!!」
屈託のない笑顔を見せるのは
私の幼稚園のころからのお友達で仲良しの女の子だ。私の通う
千穂ちゃんとは同じクラスでアニメ研究会の部活動も一緒。まあ腐れ縁って言うのかな。あっ、でも千穂ちゃんは違った意味で
千穂ちゃんの親御さんが経営する有名チェーンのスーパーマーケット、イチョウのマークでおなじみ、うなげやのお嬢様だから正真正銘の箱入り娘だよね。
だからどこか浮世離れしたぶっ飛んだ発言でいつも未祐を驚かせるんだ。
この間も拓也お
だからお兄ちゃんには絶対に内緒だけど、登場人物の名前を拓也と未祐に書き換えて朗読したんだ、物語の力を借りて大好きなお兄ちゃんとあんな関係に♡ でもかなり恥ずかしかったな……。
だって千穂ちゃん原作のタイトルが、
【
口に出すのもはばらかれる、えっちなタイトルを千穂ちゃんから聞いたときは思わず自分の耳を疑った。水を入れたやかんが一瞬にして沸騰しちゃうくらい真っ赤になってあたふたしてしまった……。
拓也お兄ちゃんと朗読した場面は女子高に赴任して来たイケメンな上にイケボの男性教師、
なんと芭祇奈ちゃんはヒロインである
「……み、未祐ちゃん。どうしたの!? 顔が真っ赤だけど具合でも悪いの?」
はっ!? 思わず妄想族になってしまった。頭の中をガル〇オンの主人公二人が、たがみキャラ特有の決め顔の角度でロンリーチェイサーを車内で流しながら激走を始めかねない勢いだった……。ガ〇ビオンなんて嫌いだ!! 悲しいよなアニメって!! と国〇映画社やオールドアニメ作品に造詣の深い千穂ちゃんに口走らせてしまうところだ。
「えっ、あっ!? な、何でもないよ千穂ちゃん!! ちょっと考えごとをしていただけ……」
「未祐ちゃん、それならいいけど。階段で荷物を運びながら考えごとは危ないよぉ」
「森田のいう通りだ、
私たちの階下で広瀬部長が涼やかな声を発した。
そ、その内容はとても物騒だけど。アニメ同好会というよりも弓道部や茶道部がお似合いな容姿はまさに日本的な美人だ。それもそのはず、広瀬部長のお家は家柄も由緒ある旧家のお嬢様だ。
あまり部長は口にしないが、周りの断片的な噂を耳にする限り世が世なら庶民の私が気安くしゃべれる立場の人ではない。だけど広瀬部長はまったくお高いところはなく、部員である未祐と千穂ちゃんをとても可愛がってくれるんだ……。
だけど日本女性たる、おしとやかな中にも勇猛な部分を兼ね備ているのは、先ほどの発言からも良く理解出来る。恥の概念や日本女性として辱めを受けるくらいなら自らの命を絶ってしまうようなほど気高い人なんだ。
あっ、未祐が前に言った広瀬部長の恋人が女性疑惑は日本女性としてどうなんだ!? と突っ込まれそうだけど昔から百合の伝統は戦前から脈々と流れているのは、お好きな方ならご存じだよね。あの川端康成も百合小説を書いていたくらいだもん……。
「赤星、何を一人でつぶつ言っているんだ。森田のいう通りやっぱり熱でもあるんじゃないのか!? うむ、残念だが同好会の活動はやっぱり取りやめにしておくか……」
広瀬部長がわんこの着ぐるみの頭部を運びながら私に声を掛けてくる。階段の幅ギリギリで可愛い垂れた耳が壁にこすれている。
「だ、大丈夫です。ちよっと中の人がアニメ同好会のメンバー説明をし始めただけですから!!」
「んっ……!? 赤星、やっぱり訳の分からないことを口走っているな。本当に大丈夫か?」
「そうだよ!! 未祐ちゃん。今日はどこか様子がおかしいよ。お兄ちゃんの話が出ると挙動不審になるし……」
「ふ、ふたりとも!! 本当に未祐は大丈夫です。さあ、部屋は右側の扉ですから、それに部屋の中でお兄ちゃんは熟睡しているはずですから、起こさないように黙って運んでください!!」
な、なんで私が逆切れ気味なの……。恥ずかしいよぉ!!
「おっと、それは失敬だったな……」
「ごめんね、未祐ちゃん……」
二人から反対に謝られ、穴があったら入りたい気分になる。
あっ!? ちょうどいいことに着ぐるみの身体の部分を抱えてるじゃない。
ぽっかりと大きな穴を開けた空洞が目の前に広がった……。
だけど逃げては駄目よ!! 未祐。
この着ぐるみは拓也お兄ちゃんに被せるんだ。
事前に確認したら部屋で爆睡しているはずだ。それに何だか昨晩は凄い寝不足だって朝の食卓でお兄ちゃんは話していたんだ。お母さんから眠剤を貰って部屋で休むを言っていた。だからチャンス到来だ。薬の作用で熟睡している間にお兄ちゃんをわんこの着ぐるみに入れちゃおう作戦だ。我ながらグッドアイディア過ぎるかも!!
「拓也お兄、部屋に入るよ……」
お兄ちゃんの返答はない。やっぱりぐっすりと眠っちゃっているんだ。
……音を立てずにゆっくりと部屋の扉を開ける。
「なっ!?」
私は部屋に一歩踏み込んで驚いてしまった。
何故なら普段はロフトベッドで寝ているはずのお兄ちゃんが、力尽きて床で寝息を立てながら爆睡していたんだ。そ、それも全裸で……!?
「いっ、いったい未祐はどうすればいいのおお……!!」
もふもふな次回に続く!!
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