可愛い妹は俺にもふもふのアレを被せないと面目が潰れるらしい。

 ……部屋に戻り、先ほどまでの高ぶった気持ちを整える。愛猫のムギにおやつのちゅーるを食べさせていたら携帯に着信があった。休日のこの時間にいったい誰からだろう?


「あっ、お友だちの千穂ちゃんからだ!!」


 親友の森田千穂もりたちほちゃんだ、私、赤星未祐あかぼしみゆうとは君更津南女子校きみさらずみなみじょしこうでクラスも同じ、部活も同じアニメ同好会でとっても仲良しなんだよ。

 千穂ちゃんが書いた夢小説を原作にして女子校の文化祭で上映するための自主アニメを現在鋭意制作中なんだ……。


 この間、拓也お兄ちゃんと一緒に練習したアニメ同好会の自主制作作品用の、ちょっとえっちなシチュエーションのアフレコ台本は千穂ちゃん原作の作品で、普段から彼女は小説を書くのが一番の趣味だからこういう作業にはとても適任なんだ。


 携帯小説って言うのかな? 内容はかなり際どい男女の恋愛を描いているみたいで、野ヘビいちごって小説投稿サイトでイケメン教師と女子高生のいちゃラブ作品、


先取先生せんしゅせんせい! 卒業まで絶対に先生の赤ちゃんを孕みます♡】という作品で、かなり小説サイト内での評価も高いんだって言っていたな……。


「もしもし、うん大丈夫、今はおうちにいるよ、えっ、何で、拓也お兄ちゃんのことを聞くの!? ……自主制作アニメの件で、ええっ!? これからウチにお邪魔したいって。うう~ん、まあ別に暇だから未祐は別にいいけど肝心のお兄ちゃんが何て言うかな……。 うん、待ってるね、気をつけて来てね!!」



 ******* 



 ピンポーン!!


 あっ千穂ちゃんだ、早っ、もう来ちゃったの!?

 ムギに餌をあげていている間に到着するなんて予想外だ、到着時間を確認しておくべきだったな。どおしよぉ!? 拓也お兄ちゃんにはまだ許可を貰っていないのに……。


 慌てて普段着の上にパーカーをはおり玄関先に急いだ、飼い猫のムギがそんな私を怪訝そうな顔で後を追いかけて来たが、今は相手をしている時間はないんだ、ごめんね、ムギ……。


 今日は幸いなことに両親は用事で不在だ、多少にぎやかでも怒られることはない。

 玄関ドアを開けると親友の千穂ちゃんが立っていた。


「やっほー、未祐ちゃん、来ちゃった♡」


 やっぱりいつ見ても千穂ちゃんは可愛いな、未祐より身体もちっちゃくて仕草も含めてうさぎさんみたいな小動物的愛らしさがあるんだ、もう食べちゃいたいくらい♡


 だけど悔しいのはおっぱいの大きさでは完全に負ける、うう、一緒にお風呂に入ったとき、冗談で千穂ちゃんのブラを私が着けたらおっぱいのカップ部分がブカブカだったんだ。


 あれっ!? 千穂ちゃんの後ろにいるのは誰なの……。


「赤星、急にお邪魔して悪いな、本当に良かったのか?」


 知的な細い銀フレームの眼鏡がキラリと光った。

 肩まで伸びるストレートの黒髪には天使の輪が広がる、端正な目鼻立ちの

 誰もが認めるこのとてつもない美人さんは広瀬沙織ひろせさおりさん、

 アニメ同好会の部長だ。


 ひ、広瀬部長も一緒なんだ!? 家に来るのは親友の千穂ちゃんだけだと思ったよ。未祐の部屋、散らかったままだ!! 親友の千穂ちゃんだけならあまり気にしないけど部長だとさすが失礼な気がする。


「だ、大丈夫です、千穂ちゃんから脚本の件で協力して欲しいと電話で聞いてます」


「それなら良かった、こんなこと頼めるのは赤星だけだからな!!」


 んっ、私にしか頼めないことっていったい何!?


「アニメ同好会の部員でお兄さんがいるの未祐ちゃんだけだからね、脚本が行き詰まってたんだ。先取先生の濡れ場が上手く描けなくて……」


 千穂ちゃんが屈託のない笑顔でさらっと耳を疑うことを口走った。


 先取先生せんしゅせんせいの濡れ場って!? 


 ええっ!? 【先取先生せんしゅせんせい! 卒業までに絶対先生の赤ちゃんを孕みます♡】のことぉ!!


 千穂ちゃんの恋愛小説のタイトルだ、未祐も読ませて貰ったこともあるが、

 お子ちゃまの私には数頁読んだだけで沸騰ふっとうしたヤカンみたいに頭が、

 カーッとなってしまったんだ……。


『先生のイケボで私、妊婦さんの耳になっちゃうっ!! 処女の女子高生なのに……。らめえっ!! 母乳が出ちゃうっ!! 想像妊娠しちゃうよぉ、エコーで動いてるのぉ、赤ちゃんが!! あふうっ、子宮が疼いて母子手帳が至急支給されちゃううっ!!』


 耳を塞ぎたくなるような描写が×××(以下削除、未祐文庫の自主規制)


「うむ、私も男性の生殖行動にはどうもうとくてな、女の子の身体なら良く分かるんだか……」


 ひ、広瀬部長は自分の性癖にオープンすぎるよぉ!!


 部長の恋人は女の子なんだ、お相手はアニメ同好会の部員という噂だ。

 それに二人で重そうに抱えた、もふもふしている大荷物は一体、何なの!?


「これは今日の練習で使う物なんだ、お願い!! 未祐のお兄ちゃんに頼んで濡れ場の練習で相手役になって欲しいの、もちろん直接裸ではやらないよ、このワンちゃんの着ぐるみに入って貰えば裸じゃないから恥ずかしくないもん!! だよね……」


 親友の千穂ちゃんはたまにぶっとんだことを言うが今回は最高MAXレベルだ。

 両手に抱えている物は良く野外イベントにいる可愛い犬の着ぐるみの頭部分だ。

 すっぽりと全身に着るタイプで垂れた耳がとてもキュートだ。


「お願い!! アニメ同好会を助けると思って、ねっ!!」


「私からもお願いするぞ、赤星、なあに本当に男女の交接こうせつをするわけじゃない、もふもふの着ぐるみを被ってなら正直、教育テレビで放送出来るレベルかもしれない」


 ひ、広瀬部長、お言葉ですが放送事故の間違いでは……。

 二人とも言ってることが意味不明なんですけど。


 でも千穂ちゃんの可愛いハムスターみたいなお願いには逆らえないな……。


 仕方ない、アポ無しで拓也お兄の部屋に突撃するか。


 後は野となれ山となれだ……。



 次回に続く!!

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