勇者神話イマジナシオン 第1部 女神の守護者

永征 陽

第零章

夢の果て

 勇者になる。それが俺のガキの頃の夢だった。


 朧気な記憶しか残ってないが、幼稚園の頃に見た、当時はやっていたアニメの影響だろう。

 

 子供たちや町を護るために、主人公はヒーローに変身して、悪の軍団や怪物に立ち向かう。どんなに傷ついても、恐れることなく、人々を護るために、何度でも立ち上がる。

 

 誕生日に買ってもらった変身道具を使って、近所に住んでた友達と遊びまわった。今となっては、懐かしい思い出だ。


 あの頃から10年以上たって、高校生になった今では、正直そのアニメの内容なんて、殆ど覚えていない。

 

 けれど、その時に抱いた、夢見て憧れた感情は、俺の心に刻み込まれている。

 

 現実では、幼稚園、小学校から中学校、そして高校へと年齢を重ねるごとに、人生は楽しいことばかりじゃないってことに気づく。学校での部活や受験勉強、そして大学進学。


 社会人になったら、毎日の仕事の連続。結婚すれば子育て、そしていずれは老いて、死ぬ。


 時は移ろい、思い出は風化し、いつか勇者を夢見たことすら忘れていくのかもしれない。

 それでも、幼い時に抱いた想いは、決して色褪せず、心の奥深くで眠り続ける。


 ある日、俺はふと思う。もしも、現実で俺が勇者になることができたら。

 

 勇者となって、お姫様を救い、子供たちや世界を護るため、悪と戦うことができたら。そんな想像を現実にすることができたら。

 それはどんな小説や漫画、アニメ、ゲームより、きっと楽しいに違いない。


 現実が重くのしかかってくるたびに、俺は妄想し、空想し、想い描く。けれど、あの時は全くわからなかった。


 想像が現実になった時、想像通りにはならないことを。そして、想像を超える冒険が、自分を待っていたことを。例え、それが想い通りにならなかったとしても、きっと全ては必要だった。

 

 導かれた果てにあったものを見て、俺は知る。


 かつて幼い時に憧れた瞬間に、ようやくたどり着けたことを。


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