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 触手島からの帰り道は、何事もなかった。


 魔法伝書鳩を飛ばし迎えに来て貰う迄1日程、上陸した時の様に海岸縁に触手共がうねうね~という事も無かった。迷宮1階のアレも含めた彼ら? は多分にナイアが復活した事で、過去に居た魔獣が一時的に復活したのだろう、というのが俺達の見解だ。思えばあはれな生物だったな。


 迎えに来た船長から心配され、事の推移を聞かれたが、まぁ適当に誤魔化して話した。

 ……件の神殿崩壊は局地的な地震があったのだろうという事で(ガクガクブルブル)。船長に聞いたが既に調査も数10年前に終わっており、学術的な価値もない、当時の新興宗教かなんかが適当に石を積み上げて作った神殿だったのだろうという事だ。こちらの世界ではモアイ像やピラミッドの巨石の謎も魔法で解決するのだろうな。


 無事に本島に到着し、その足でギルドに向かい、依頼達成? 報告をする。とはいえ目的のネックレスはネメシスの魔法により物理的に封印され、更には神殿毎地面の下だ。と、いう訳で……


「あれだけ苦労したが、依頼という形では失敗という事になるか……」

「な、何かごめん……」

「いえ、事の推移を細かに話す訳にもいきませんし、依頼としては遂行出来ませんでしたが、旦那様もウェンティさんもわたくしも冒険者としてレベルアップ出来ましたしね。特にウェンティさん、今ならば銅級僧侶プリーステス試験の「実技」は問題ないと思いますわよ。教会の司祭になるには各宗派の勉強が必要だと思いますが」

「う~勉強苦手~。そもそも育ててくれた神父様には申し訳ないけど、教会勤めにはなる気はないよ……働いたら、負け?」

「……思い出したくはないと思うが、ナイアの知識から何か使える物はないのか? あの女と戦ったのは一瞬だが、かなりの魔法を使えたようだが……」

「うーん、何か彼女が封印? されてから、頭の中で聞こえていた声も聞こえなくなっちゃったんだ……元々夢現みたいなもんだったし……ごめん、ね?」

「いえ、彼女は彼女、ウェンティさんはウェンティさんですわ。無理に彼女が使う様な邪悪な魔法は思い出さなくても、新しい奇跡を伝授して貰えば幾つかは直ぐに覚える物と思われます」


「そういえば、奇跡というのは魔法とは違うのか? アテナが適性があるといった「光魔法」と同じかと思っていたが……」

「似ていますがまた違う物ですわ。ええと、正確には魔法が二系統、其れに奇跡という枠ですわね。

 旦那様やわたくしが使う火・水・風・土は四大元素魔法と言いまして、この世界の人間ならば呪文の習得さえすれば相性はあれどある程度は使えます。

 ウェンティさんが使う奇跡は各宗派の聖職者が使えるもので、文字通り神の力を借りて起こす奇跡の様なものです。主に迷宮内でかけて戴いた様な体力回復・疲労軽減の他、亡霊・亡者の類を霊界へと還す奇跡、人々の勇気を奮い立たせる奇跡等があると聞きます。

 アテナ様が素質のある光魔法は奇跡に似た回復魔法の素養も発生しますが、其の他にも各人特別な能力があると言われています。アルテミス様が素質がある闇魔法も同じタイプと言われていますが、其方は白狼人族等、私達人間やエルフと別の種族特有の物の為まだ調査が進んでいませんわ。


 光魔法は素質があるという人でも其れを発動させる事なく一生を終える場合が殆どですわ。

 過去にいた光魔法の使い手は、天候を自在に変える事が出来たり、無から物を創造したり、果ては時間を巻き戻したりも出来たとか……」

「其れは凄いな……まさに神の力其の物じゃないか。アテナがそういう事が出来る様になるのは悪いが想像が付かないな」

「光魔法の使い手から伝授される物でもないらしいです。使い手曰く

「人生の岐路」……大病を患ったり、生命の危機に差し掛かった時、突如頭に思い浮かんだそうです。そして其れを自在に発動は出来ない、正に……ウェンティさんには悪いですが聖職者の方が使われる奇蹟とは別の「神の力による奇蹟」らしいです」


 ……「神の力」ね……おい女神、これは「そういう事」なのか?


 ……私は女神では以下略。是は……責任を押し付ける訳ではございませんが、前任者の双子の女神の時の案件ですね。彼女達は仲が悪く、揉め事がある度にこの世界のとある大陸……まぁ大きな島に近いですが、其方で数十年に一度戦争を起こし、その勝敗によって解決をしていたそうです。以前にも言いましたが……其れは我々神々の「常識」ともかけ離れた所業です。

 件の光魔法による「奇跡」は、其の当時活躍した異世界からの助っ人・異邦人エトランゼ……貴方様の同胞ですね……が使えた特殊な能力、ネメシス様が言われた奇跡としか思えない力、を使っていた者達の能力が先祖返りした子孫にも発現、という感じですね。


 ……つまりはアテナも、俺と同じ同胞が先祖に居る訳か……異世界人にしては綺麗な黒髪だ、とは思っていたが。


 ……其の認識で間違っていません。とはいえ、最後に双子の女神が起こした戦争は千年以上前ですし、アテナ様にその力があるかは不明です。もし気になる様でしたら、まだ其の当時から生き残っている者が複数いらっしゃいますし、探し出して聞いてみるのがいいのでは?


 ……何気に重要な事を聞いたな。千年以上生きているとか、俺の今の種族、エルフよりも長いんじゃないのか?


 ……まぁ、其の辺はお好きな様に……彼女達に会わなくても、貴方様のスローライフには影響ないでしょうしね……。


 ……彼女達? 女性なのか?


 ……おっと、口を滑らしました。余りこの世界のネタバレをするのも面白くないでしょうしね。新婚旅行と一緒に、色々この世界の謎を、楽しんではいかがですか?


 ……別に話して貰ってもいいのだがな。まぁいい、そうさせて貰うよ……。


 ……


 女神との会話も終わり、ギルドの用事も済んだ。いよいよ待ちに待ったアテナ達との再会だ。喧嘩とかしてなかったかな? 俺が居なくて欲求不満になってないかな? ルナちゃんは元気にしてるかな?

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