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……俺達3人が目の前にある神殿跡……神殿迷宮から脱出して、1時間程経過した……特にナイアの方から、追手の様なモノが放たれた様な感じもしない。時折鳥の様な鳴き声が聞こえる、静かな山頂の廃墟の侭だ。
「まだ……油断は出来ませんが……今の所は、ナイアが出てくる様な予兆もありませんわね……ネックレスの侭此処迄出てこれるのでしたらウェンティさんに憑依等しなくても良かったのでしょうが」
「では……予定通り、ネメシス……」
「はい、旦那様、ウェンティさん、フライの魔法を使い御下がりを……」
……ネメシスは少し長めの呪文を唱える……
「……灰燼と帰せ! デストロイ・アース!」
この言葉を締めにネメシスから凄まじい力の脈動を感じたかと思えば、この島に着いた時のアース・クェイクとは比較に成らない程の振動で地面が揺れ始めたっ!
其の侭前方にあった廃神殿跡は、まるでミキサーに入れられた果物の様に粉々になり……数分後、少なくとも50メートル四方は有った神殿跡は、僅か10㎝程の大きさの砕石が散らばる荒野と化した。
「……ふうっ、終わりましたわ……」
「……お、おう。お疲れ様……」
溜息こそ吐けど涼しい顔でネメシスが此方を振り向く……ガクガクブルブル……しかしほぼ全ての属性の呪文をこの規模で操る事が出来るネメシスが銀級魔法使いとは、金級とかは一体どんな神々だ? ……と思ったら、ポーンとこの世界のギルドの階級知識が出て来た。級とは要は他人へ「指導」する技能の事で、ネメシスよりも階級が下、銅級やライセンスを持たない物でもネメシス以上の者も居るらしい。
「……じゃウェンティ、行って、みるか?」
「う、うん……」
そして俺達3人は、転ばない様注意深く神殿があった場所へと足を踏み入れた……先程迄入り口だった場所も含め隈なく歩いてみたが……ウェンティが居ても、先程迄の様に神殿内……ナイアの言い方だと神殿迷宮内に入る事は出来なくなっていた。
安心……とは言い切れないが、是で暫くは、此処に足を踏み入れても大丈夫であろう。
「取り敢えず大丈夫そうだな……まだ不確定要素は残るが」
「……ええ、説明しましたがこういう異空間の迷宮は、入口を物理的に破壊する事で入れなく、出れなくなるそうです。極稀に迷宮内のモンスターが異常増殖し地上に溢れかえる現象もありますので、其れを抑える為のシステムらしい、ですわ」
「す、すたんぴいどって奴かな?」
「ええ、幾つもの文明を滅ぼしたという最悪の魔獣被害……其の殲滅の為に先程の様な広域破壊呪文が発展したとも言われてますわね」
……ウェンティの身体にも、異常は無さそうだ……とはいえ先程の、ナイアとの接敵から2時間程しか経ってない……。
彼女の境遇は同情するべき部分もあったが……だからといって様々な非人道的行為を数千年に渡って続けて来たらしいし、決して許される物ではない。
願わくば、其の侭あの迷宮内で静かに朽ち果てて貰いたいが……。
「旦那様? どう致しました?」
「あ、嗚呼……一応是で、終わったんだな、と感慨深くなってな……僅か二週程の探検とはいえ、色々な事が有り過ぎて……さっさと帰って宿屋で暫く休みたいな……」
「うん、わたしも早く帰りたい……でも是で、二人とはお別れなんだね……やっぱり、寂しいな?」
「……え?」
「……え?」
ウェンティの呟きを、ネメシスがきょとんとした顔で聞き返す。
「最後の階に上がる前に、言いましたわよね? 是からは私達と、一緒に暮らすって……もう既に四人目の妻として予算の計上や新居の増築等、魔法鳩で概要を飛ばしてしまいましたわ♪ 今から断るとなると、国家補償規模の莫大な違約金が発生しますわねっ♪」
「えっ、ええ~~~!! わ、わたし此の服位しか売れる物ないよ……じょしちゅうがくせいのにおいがしみこんだせいふくとはいえ、わたしみたいなちんちくりんの着たのでそんな価値があるとは……ま、まにあっくなせいへき? なアヤカートなら買ってくれるかな?」
「……待て」
「ま、四人目の妻と言うのは冗談ですが……あ、若しかして、育ててくれた教会でしたっけ? 其方にも御挨拶しに行かないといけないのかしら? 其れならば一寸早まったかしら?」
「い、いや……記憶喪失のわたしを養ってくれた教会の神父様も1年位前に亡くなってしまったし、わたしの居た孤児院の反対を押し切って此方に来たので、今更……帰り辛くて……で、でも、本当に良いの? 私、アヤカートが求める夜の御世話とか全く解からないよ?」
「嗚呼、其の辺は安心していいですわ、わたくしも初めてがありましたし……其処はわたくしと他の妻、アテナ様とアルテミス様との充実したサポートで初めての人でも初日で或る程度の性技を伝授出来ますわっ♪」
「えっ、ええ~!! そ、それってまつばくずしとか、はなびらだいかいてんとか、あ、あわわ……や、やっぱり交換日記からじゃ駄目かな?????」
……
今日は良い天気だな……さっきまであんな事が有ったとは信じられない快晴だ……矮小な人間同士の諍いなど、此の雄大な大自然の前では児戯の様な物だな……嗚呼、アテナやアルテミス、ルナちゃんに会いたくなってきた……
「に、にほんざしってなに?????」
「嗚呼、其れは前と後ろの穴のどちらかにアヤカート様のアヤカートを挿入して、もぅ一つにはアヤカートさんのアヤカートを模した張り型を」
「お前たち……もう寝なさい……」
……
……
くっ……油断したわ……何時の間にか私毎、こんな暗くて冷たい石の中によくも……ふっ、ふふふ……諦めてなるものですか……こんな物理的な拘束など直ぐに破壊して、又あの個体に憑依し
「……ん~、諦めの悪い娘、苦手ですぅ~」
?????……!!
……自身の分身ともいえる個体と、其の付き添いの冒険者しか入って来れない筈の亜空間……何時の間にか其処に立つ、分身と同世代に見えるポニーテイルの黒髪少女……
「別れる前のふわちゃんも、頑張る娘ではあったけれど……でも、もぅ、見た目も中身も、あの頃みたいな、可愛いふわちゃんじゃないんですねぇ……ウェンリィさんが居るから、貴方はもう、要らないですぅ……」
少女は手を伸ばし、ふわちゃんと呼んだモノに触る……すると其のモノを中心に空間がぐにゃり、と歪み……
其のモノが叫び声をあげる暇もなく……空間毎「無になった」。
「……さようなら、昔の友達……お互い前みたいに、遊べる世界に行けてたら良かったですねぇ……」
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