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また後で、そういって俺達は彼女と別れ、一度船室へ戻る。
「……」
「どう思われます? 彼女」
ネメシスの方から話を振って来て貰える。
「そうだな……確かに心配だが、これ以上詮索してもどうにもなるまい? 俺達だって観光旅行で、実際そこまで観光ビザの日数にも余裕はないからな」
「まぁ観光ビザの件はお母様に頼めばどうとでもなりまsゲフン! 融通は聞くと思いますけどね」
ネメシスが言い換えたようで、ほとんど変わってない事を言う……何か悪い顔してるし。
「まぁどっちみち、彼女の方から話してくれないとどうにもならんよ……イロハの国にだってギルドはあるらしいし、護衛の冒険者も雇うだろうさ」
「あら、冷たいですわね……旦那様はこういうのに、積極的に首を突っ込むタイプかと」
「君たちが……特にルナちゃんという被戦闘員がいなければ考えたさ。助けたいのは山々だがそれでも優先は君たち家族だし、俺の手は誰しも護れるほど長くはないよ……ネメシス、君には逆に護って貰う事になるだろうしな」
そう言ってネメシスの肩に手をかけ、引き寄せる。
「ふふ……もうわたくしの事を家族と認めて下さるのですね……嬉しいですわ♪」
そうして人目も憚らずキスを交わそうとして……。
「ギルティ」
はい、判ってましたが……目の前にはルナちゃんの目を隠しつつ、こちらににこやかにほほ笑む地獄の女神様が……。
「全く、少しは人目を気にしなさいよ……これだけの人数が見ているのに……」
「あら、アテナ様もフルーツ村では人目も憚らぬ接吻を交わしてたじゃないですか? そもそもこの船の客の半分以上はカップルみたいですしお気になさらずとも」
「ふ、フルーツ村は半分身内みたいなものだし、そ、それに……どこでもキスしてたら、夜中が……我慢出来なくなっちゃうじゃない?」
「おねえちゃん、がまんってな~に?」
まあこれから二日弱も「禁欲」せざるを得ないのだ。別料金で何故かベッド付きの「会議室」を借りる事が出来るが……借りた段階でバレバレですやな。
……
さて、無事? に船もイロハ国に到着した。アテナやルナちゃん、アルテミスにもウェンティさんを紹介する機会があったが……彼女は基本無口だったようで、船旅の二日間程度ではそこそこ打ち解けたかな? 程度で終わったようだ。
「では、皆さん……お元気で……」
「ええ、機会があればまた」
彼女とは港街で別れ、俺達は神殿のあるサキョウの街へ行き、彼女は首都であるウキョウの街へと旅立つようだ。
ここ、イロハの国は……この港街ではまだウィス国と似た感じの建物が多いが、この国独自の文化と思われる……あれは侍っぽいし、あっちの女性は芸者っぽいな……まぁ元の世界のそういった時代っぽい文化だ。女神に事前に聞いていたが、俺よりも数百年前に転生した者が建国した国らしいしな。
次のサキョウ方面への乗合馬車……イロハの国では牛車がメインの様だが、ウィスの国の馬車ほどではないようだがイメ-ジよりは早く動くようだ……を待つ間、俺達は休憩の出来る食堂でこの国独自の食事に舌鼓を打つ。
「……」
「どうした……やはり彼女の事が気になるのか?」
「……ええ、自身の力を過信し、または金銭的な事情でソロで旅をする冒険者や迷宮の探索者を見てきましたわ……そのほとんどが帰還しなかったり、迷宮内で装備だけ見つかったり……母の代から我が国では一人での迷宮の探索は原則禁止しているのですが、それでも浸透しているとは言いませんわね」
ネメシスの憂う表情を見る……こういう気配りが出来るのが民に慕われる原因だろうな。
「……まぁ乗り掛かった舟か。アテナ、ルナちゃん、聞いてくれ」
「え?」
「この国について間もないが、もしかすると、ほんの少しだけ別行動をするやもしれぬ。まだ相手次第で本決定ではないが、下手したら数週単位で離れるかもしれない。婚前旅行というのに心苦しいが……」
「……いいわよ」
まだ理由を説明していないのに、アテナが割とあっさり了解してくれる。
「いいのか? まだ理由も言っていないが」
「多分だけど……船の中の、あの女の子関係でしょ? アヤカートはああいう表情した子を、見逃せないって判るわよ。ちゃんと助けてきなさい? 寂しいけど……ルナもいるしね。こっちは大丈夫」
……流石、俺の婚約者だ……まだ付き合っては一年も経ってないのに、な。
ルナちゃんもアテナに抱き着きながら、寂しそうな顔はするが……ちゃんと了承してくれた。
「無論ちゃんとした宿に充分な食事が出来る金は用意する。そして……アルテミス、すまないが……」
「ふん、ワシはそもそもおまけじゃ。小娘とその妹の二人の警護位負担でも何でもないわ。しっかりと、三人が贅沢出来る程度の金子を置いて行けよ?」
「ありがとう、三人とも……ネメシス!」
「……ええ、今からなら間に合いますわっ! 無論素気無く断られるやも知れませんが……行きましょう♪」
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