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 「まぁとりあえず……その島について聞き込みをしてから、場合によっては装備とかを整えなければな……」

 「え? いいの? ……自分で言ってて何だけど……怪しい話だと思うよ……わたしも人伝に聞いた話だし……」

 「正直胡散臭い話だが……でも君はその話を信じるに値すると思ったんだろう? これでも人を見る目はあると思うし、君が嘘をついてないのも判るよ……逆に君はいいのかい? 出会ったばかりの俺達を怪しいと思わないのかい?」

 「……ううん、わたしも、信用するよ……わたしなんかのいう事を……聞いてくれる人なんていなかったし……」

 「それは勿体無いな、君のようなキュートな子の助けを断るなどそいつの目は石ころか何かで出来てるに違いない。御姫様の願い事を断る事などこの騎士めには出来ませんよ♪」

 「えっ……キュート? ……おっ、御姫様??? ……そ、そんな……そんな事言われた事なんか……」

 「……やはり貴方様、嫁帝国を作るつもりではありませんの? アテナ様のお気持ちが少しわかった気がしますわ……」

 何故か顔を真っ赤にして押し黙るウェンティ。そしてネメシスがこちらをジーっと、呆れたような、ニヤニヤしたような変な目で見てくる。


 ……


 さてこの後、とりあえずギルドの人間にその触手島の事と、神殿の事について確認を取る……ウェンティを疑ってた訳じゃないが、触手島というのが正式名称なのは判った。そしてギルドの人間にも、その様な珍奇な名称になった由来は判らないそうだ。

 記録が残らぬ程昔から呼ばれていて研究者すらいるらしいが、いわく昔魔獣が今より闊歩していた時代、島一面に生えていたぬるぬるした触手状の植物への注意を促す為、というのが定説らしいが、にしてももう少しこう、ネーミングセンスというものをな……。

 今は危険がない島らしいが、何となくその名前に不穏さを感じたので、やはりアテナやルナちゃん達は連れて行きたくない。島迄の旅路は一日半程、探索に二、三日使ったとしても一週~十日以内で帰って来れるだろう。最悪船が座礁等したら二人を抱えて飛んで戻ってくればいいし。


 諸々の準備を済ませ……といっても冒険者でもあるネメシスのマジックバッグには常時最低限、というにはいささか過剰な物質が常備されているので、買うのは水と食料品程度だが。

 ギルドにも寄って、とりあえず今回の探索を依頼として届け出、パーティでの裏切りや犯罪行為が無い様契約の魔法をかけて貰う。ネメシス曰くどんな善人だとしても口約束だけでは駄目で、きちんとギルドに管理して貰う事が重要なのだそうだ。


 出発の前に、アテナ達へも無論言づけておく。


 「ちゃんと、護ってあげなさいよ! まぁネメシスがいるから問題はないと思うけど。夜は暖かくして寝なさいよね! アヤカートはすぐ裸になって寝るんだし……ウェンティさんの前でやったらコロs」

 「おしごと、がんばってね!」

 「ちゃんと戻ってくるのじゃぞ? そなた達が死んでもワシは小娘共の面倒など見ないからな。 ……ふ、ふん! 別にご主人共の心配などしとらんわっ!」


 ……あえて誰がどれを言ったかは言わないが、ヤンデレ&ツンデレ乙、である。


 さ、船もチャーターし、各種準備を終わった所で触手島へ向けて出発をする。船頭にもこの島へ行く物珍しさを言われたが、まぁ名前からしてこういう事でもなければうら若き女性二人を連れて行きたい島ではないやな。

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