34
俺達が辺境伯家での騒動を解決してから10日ほど経った。ネメシスはまだ辺境伯家で妹ゲフン!母親の辺境伯の手伝いをしているそうだ。とはいえ今まで表舞台にも中々出れなかった父親が回復したら、更にネメシスの負担は減るだろう……結局あの時の呟き通り、外堀が埋められている気がする。
因みにフルーツ村の別荘はほぼ内定し、ヘレネがそのまま現地における総責任者として在留する事になった。引き続き村の自警団への戦力指導及び、俺とアテナへの伝授行為を続けている。
そのお陰で風魔法の向上が進み、特に俺のフライの魔法はLV3、3mほど浮き上がれるようになった。
「この短期間でこれだけ向上するとは……流石エルフですわね。私のフライを追い抜くのも遠くないでしょう……最も主殿は、既に飛行技能をお持ちですが」
「いや、あの技能はグライダー、いやムササビが滑空するようなものでな。成る丈高い所から飛び出さないといけない。小回りも効かないしフライのLVが上がるに越した事はないよ」
「本当、羨ましいなぁ……私は頑張っても数10センチ浮くのが精いっぱいだし」
「いえ、風魔法に適性がなくその高さまで浮けるのはアテナ様は才能がおありですよ。地面から浮けるという事は水面やトラップのある迷宮床も回避出来、高所から落下した時や壁に突き飛ばされた時も衝撃を殺す事が出来ます」
「そもそもそういう事態に陥るのを避けたいわね……」
アルテミスも渋々ながら風魔法の伝授を受ける事となった。狼体はある程度の斬撃や魔法の攻撃にも耐えるが、人間体は多少の魔法抵抗力はあれどほぼ人間と同様らしい。ウィンドウォールだけでも覚えておけば人間体を弓で狙われても少しは安心だろう。
「確かに……私に子供がいたなら、アルテミス様やルナ様と一緒位でしょうしね……少し背徳感がありますね」
「意識するな!そもそもワシが憑依した段階でこの子は肉体年齢が停止した。昔はそれを不老不死と勘違いし是非自身を人間体に、という輩もいたがな……そもそも同性・女にしか憑依出来ないうえ、憑依した段階で意識は消えるのだがな」
ヘレネさんは実は未亡人で、成人即入籍をしたらしい。とはいえ亡夫は女性の貞操は20歳まで守るべき、という考えだったらしく、ヘレネさんが20歳になる前に夫は亡くなったのでキスはおろか性行為もしていなかったそうだ……こちらの国では結婚式の時にキスをする文化もないらしいしな。
「結婚式といえば……結婚前に各地の教会を廻り神々に祈りを捧げる風習があるとはな……」
「各地を一緒に回る事で人生における困難も一緒に解決していくという意味らしいわよ……まぁ婚前旅行みたいな物みたいだけどね」
「私も亡き夫とそれぞれ火・水・風・土・光の神殿を廻りました。危険もあるとはいえ街道のしっかりした国も多いですし心配はご無用ですよ。ネメシス様とアルテミス様もいるのでしたら更に安心でしょう」
そう、この婚前旅行は別に婚約者と2人だけで行う物でもないらしい。昔は本当に2人だけで行われていたが、治安も悪かった為本当に命を落とす事も珍しくなかったそうだ。その為段々と形骸化が進み、今は候補がいるのなら第二、第三夫人と一緒に回ったり、家族を同行したりする場合もあるらしい。
「しかし……本当に体よく各地を回るよう仕組まれている気がするな」
ポーン、気のせいです。
……出やがった……そこまでして食べたいのなら自分で降臨して食べるか、信者に言えばいいじゃないか!
……この信託は転生者にしか聞こえません。なので数10年に一度の転生者がいる時は各地の御馳走……コホン、貢物に込められた信仰の力を受けるいい機会なのです。この世界になかった料理法等もありますしね。
……まさかその為だけに転生者を呼んでいる訳じゃないよな……そういえば女神は火水風土光のどの属性なんだ?
……それぞれの属性の神は別にいらっしゃいます。私……コホン、女神は創造神ですので属性云々はございません。
……その欲に忠実な所だけを見ると闇の女神だな……まあいい、あの時言ったようにアテナ達と各地を回りたかったのも事実だし乗ってやるよ。
「……どうしたの?ボーっとして、また誰か別の女性の事でも考えてたんでしょ?」アテナが図星を突いてくる……女神相手でも嫉妬してきそうだな。
さ、辺境伯の夫の方も順調に回復し、ネメシスも早期に戻ってくるらしい。辺境伯殿は本当はそのまま補佐として教育を続けたいらしいがな。
ルナちゃんもほぼ全快したに近いし、帰ってきたら計画を建て、俺・アテナ・アルテミス・ルナちゃん、そしてネメシスの5人で婚前旅行だ!
……
……
……ここは……どこ? ……何か、長い夢を見ていた気がする……
暗闇に立ち上がる、一人の……
------------------------------
※エイプリルフールから新章開始、というのもアレなので^p^ギリギリ3月開始に変更&2話掲載とします。その代わりすいまそん次回は4/8(予定)に~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます