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 「私は出会って2か月しか経っておりませんし、ただの村娘でございますから、アヤカート様の行動に文句を言う立場ではございませんけれども!」

 翌朝、自分は正座させられている。

 目の前にはベッドに座ってこちらを説教するアテナがいる。敬語口調なのが逆に怖い。

 「自分を襲ってきたモンスターを返り討ちにしたせいで奴隷になってるから助けたいって、経緯は判るけど、あまりに優しすぎるんじゃないの?これからもずっとそうするつもり?」

 「返す言葉もない……」

 「大体、私が待ってるのに奴隷を買ってまで……せ、精処理したがるなんて!」

 白狼族の彼女を助けたい事に怒ってるのではなく、飲みに行くというていで奴隷市に行き、性奴隷の部屋に入った事に怒っているらしい。

 俺はアテナに抱き着き

 「アテナをないがしろにした訳じゃないんだ。今日の試験の為に疲労を残すのもなんだし、性奴隷を買うつもりもなかった」

 「……じゃあなんで性奴隷の部屋に入ったの?」

 「案内人に誘導されたというのもあるが……性奴隷は容姿や体型が扇情的ってだけじゃなく、戦闘奴隷や労働奴隷と違い力がなくても他の能力を持ってる者もいるんだ。

 俺もアテナも狩人志望で魔力はそうでもないし、剣と弓以外の能力を持つ仲間が欲しかった。モンスターとはいえ少女の奴隷ならアテナの可愛さについ手を出す危険もないしな」

 「かっ、可愛いとか……そんな事言っても騙されないんだからねっ!」

 ……まぁ自分でも言い訳臭いのは判ってるし、少し邪な気持ちもあったのは本当だが、ラノベとかでは性奴隷として有能な仲間が捉われていたりする場合も多いしな。

 「どのみち試験が終了してからだ。ほら、そろそろ支度をしないといけないので……許して貰えませんかね?」


 ……アテナはまだ脹れていたが、とりあえず予定通り狩猟ギルドに行き、ライセンスの為の試験を受ける。

 魔法によって部屋の中が草原や森林等に変化し、出現する動物やモンスターを次々と処理する。うむ、これならアテナでも問題なく合格するだろう。むしろ設問の方が難しかった。

 ……という事で数時間の試験で、2人とも無事狩猟ライセンスを習得出来た。アテナは最低限の知識と狩猟の腕を示す銅級ライセンス、俺はそれに加え銅級以下に指示・指導の出来る銀級ライセンスとなった。

 ライセンスを持つと狩猟した肉や素材の売却も出来、国から給金も出る。これで一応無職ではなくなった訳だ。ステータスでも無職から銀級狩人になっていた。


 「私もライセンスが取れるなんて……」

 銅メッキ?のカードを喜びながら見るアテナに

 「俺の見立て通り、アテナには才能もあるよ。直ぐに銀級も習得出来るんじゃないかな?」

 「煽てないでよ、人への指導なんて私には無理よ。アヤカートみたいに上手く教えられるとも思えないし……」

 「俺も指導経験はアテナが初めてだし、それだけ吸収が速いんだよ……じゃ、すまないがライセンスも習得したし、彼女に会いに行くか」

「……私に隠れて、女に会ってたのには違いないんだからね。まだ許した訳じゃないんだから!」

 しまった、蒸し返してしまったらしい。


 ……ともあれ俺はアテナを伴って、奴隷市場に出向く。奴隷市場は未成年お断りなので、一般的な事務所?の方に移動して貰っていた。

 支配人は俺たちのライセンスを確認すると、さっそく交渉に入る。免許取り立ての新人狩人と契約などリスク高過ぎじゃないか?と思うが、新人冒険者は他人とパーティを組むのが難しい為このように奴隷を借り受けメンバーにする事も多く、国からも補助金を貰っているので問題ないらしい。

 アテナは初めて会う白狼人族の彼女に……


 「すっ……」

 「す?」

 「すっごく可愛い~~~♪なに、この子が白狼人族なの?きゃ~~~♪」

「な、なんじゃあああああ!!」

 アテナは止める間もなく少女に飛び掛かった。ギューッと抱き着きちゅっちゅっちゅっちゅしている。

 「は、離れろおおおおお小娘えええええ!!」

 「ちっちゃいのはそっちでしょ♪いやんもうそういう背伸びして生意気そうな所も可愛いいいいいい♪」

 「はーなーせー!そんな所触るなあああああ!!」

 「……はい、まあこんな感じですので、うちが引き取ります。何かもう本当にすいません」

 唖然とする支配人に向かって俺は頭を下げた。


 ……ちなみに勿論俺に襲い掛かってきた時の白狼の身体もある。それも引き取る事になるよな。あの時は大型犬より大きかったしエsゲフン!食事代が大変だな……


 ……支配人に案内されたそこには……

 

 「可愛いいいいいいいお持ち帰りいいいいイイイイイイイイイ!!!!!」


 ……すいません嘘をつきました。でも同じくらいハイテンションでアテナが抱き着いてお持ち帰りしそうになった。

 「……どう見ても俺に襲い掛かって来た個体と違うよな?子犬じゃないか」

 「犬じゃないわ!……ワシの狼体はおよそ150年は憑依し、既に元の肉の身体は失われ幽体のようなものじゃ。この様に生命力を吸収しない限り最低限度の大きさになる」

 要は省エネモードって事か。

 

 商談もまとまり、改めて支配人から俺たちに彼女の支配権が渡される。正式に買い取るまではレンタルという形だが。

 基本奴隷は首輪によって管理され、支配権のある主人に害のある行動が出来ない。

 とはいえ自由意志を持ち、制限しない限りは主人に意見も出来るし、命令されても余りに無茶な行動(自殺しろとか、法に反する行動をしろとか)は拒否出来る。

 そして主人側も奴隷の生存権管理を求められ、従わない場合は犯罪者となる。


 無論スローライフ願望の俺だし無茶をさせるつもりも、奴隷を性のはけ口とかにするつもりもないがな……多分。


 「さ、これで今日から家族ね♪思いっきり抱きしめたり、お風呂で洗いっこしたり……ルナにも会わせないとね、仲良くなるかしら♪」

 「おい、ご主人、こっちのご主人をどうにかしろ!」

 「アテナさん、性格が変わってはいませんかね……」

 俺は少女をprprするアテナを抑えつつ

 「そういえばお前の名前を聞いていなかったな。何という名前だ?」

 「ワシらには名前などない。匂いで判別出来るし必要ないな」

 「えーそれも寂しいな。アヤカート、何かいい名前つけてあげましょうよ」

 「そうだな……」

 アテナ、ルナちゃん、どちらも偶然かもだが俺の世界の女神の名前だな。なら……

 「……アルテミス、というのはどうだ?俺たちの信仰で狩猟の女神の名だ」

 「…うん、響きもいいしピッタシね、じゃ今後はアルテミスちゃんね♪」

 「だから抱き着くなあああああ!」

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