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 さて騒動があってから約2か月、俺はすっかり村の生活に溶け込んでいた。

 俺の提供する肉の滋養のせいか、ルナちゃんもすっかり元気になり、村の男連中も体力がついて仕事の効率が上がったと大喜びだ。

 アテナとルナちゃんの両親が亡くなった遠因でもある薬草も、楽ではないがエルフ知識では一応村でも栽培出来るものだった。出来れば危険な森奥に無理に入る必要もなくなる。成功して彼女たちのような境遇の者が少しでも減ればいいが。


 出会った次の日に、ああいう関係になってしまったアテナとは、ほぼ事実婚状態だ。確かに俺も彼女も特に隠すような事もしてないし、まぁばれますやな。

 狭い村だし同僚の女性兵士はほとんど結婚していたし、彼女よりも若い時にしていた人もいたのですんなりと受け入れられた。とはいえ……。

 「まあ、ほとんど正式なライセンスを持つ狩人と同じ仕事をしてると思うけど、やはり登録はした方がいいわね」

 というアテナ。村長や老狩人にも言われたがいつまでも無職、というのは体裁が悪い。正確にはノーライセンスの者が肉を供給するのも、例えばこの村の近くに冒険者が来て目撃された場合等問題があるらしい。無論数か月程度で罰を受ける事もないが一応この国の法律には従わないとな。


 次の木材の出荷時に木材問屋の護衛兵士(彼らとももう顔なじみだ)と一緒に河口にある木材の加工工場についていき、そこから馬車に乗ってライセンス発行出来る狩猟ギルドのある街へと行く予定だ。ゲーマーのサガかギルドと聞くとわくわくするな。

 旅にはアテナもついて来てくれる事になった。村の連中に新婚旅行だとからかわれぽっと赤くなる、可愛い。彼女の為にもしっかりライセンスを習得しないとな。

 そこまで行って帰ってくるのにスムーズにいってもどうしても数週間かかるので、残念ながら体の弱いルナちゃんはついていけない。とはいえ現在栽培している薬草が上手くいかなくても既に採取している薬草と、少し多めに狩った肉のお陰で直ぐに元気になるだろう。引き続き村の老婆もお世話をしてくれる。

 

 いよいよ出発日となった。ルナちゃんは泣いていたが前日にアテナと姉妹水入らずで過ごしたせいか当日はしっかり我慢しているようだ。

 出発の日には村長や老猟師(彼も体調がよくなり、若い?俺のペースほどではないが猟を再開出来るらしい)始め、村人総出で送り出してくれた。2か月ほどしか過ごしてないがいい村だな。ライセンスを取った後ずっとこの村でアテナとルナちゃんと過ごすのも悪くない。

 数10本もの樹を筏状に繋ぎ、その上に乗り器用に川を下る船頭と、川の横の路を並走する護衛兵士と俺らの駆る馬。俺とアテナは乗馬技能がないので兵士さんの後ろに乗せて貰っている。

 滅多にない事だが腹をすかせたワイバーン等が筏上で回避しようのない船頭を狙ってくる事もあるらしい。この辺は奴らの巣もないのでほとんどの兵士は戦闘した事がないが、一部のベテラン兵士は別の川での護衛の時数度遭遇したらしくその時の武勇伝をしてくれた。こういう事をいっているとフラグしか聞こえないが……


 ……まぁそこまで劇的な事もなく、無事に河口の工場についた。大規模な乾燥・加工設備もあり各地に出荷する為数隻の船が停泊し、ちょっとした港町だ。

 船頭と護衛兵士たちと別れ、ライセンスを発行する狩猟ギルドのある街へと向かう馬車に乗る……前にアテナは初めて見る海に興奮していた。村からは馬で2日ほど、そう遠くはないのに来れなかったのか……改めてこの世界の旅の過酷さが判るな。

 「ねー見てみて、凄く大きくて綺麗♪

……アハッ、水がしょっぱ~い♪……わぁ、あんな大きな船見た事ないわ♪ルナにもいつか見せたいな♪」

 初めて見た海に年齢相応にはしゃぐアテナ。可愛い。ここよりももっと暖かい海で一緒に泳いだりしたいな。アテナにはぜひ赤いビキニで……。

「……また変な事、考えたでしょう?」

 ……出会った時は渋さを演じていたが、もうすっかり彼女には内心のエロさがバレバレだ。くそっ、夜覚えておれよ……という事で街に行くのは1日先延ばしし、港町の料理に舌鼓を打ちつつアテナの腰を打(ry

 ……いかんな、前世の癖か親父ギャグが出ちゃうな。まぁ、どちらも存分に打ちましたけどね。


 ……翌日名残惜し気に港町を出発する。材木問屋の船に同乗して別の街に行くのもいいな。まあこの世界の操船技術は多分に荒いし、俺やアテナの様な船に慣れていないものが乗ると船酔い必至だろうが。

 次の街、ギルドのあるスレイの街までは陸路で3日ほどだった。馬車酔いが心配だったが2人とも問題なく海岸沿いの景色を見つつすんなり辿り着いた。

 さすがは街、ファンタ村・材木問屋の港町より数倍広い。見た事のない種族も結構いるな。

 アテナは既に色々目移りしてるが、まずは宿だな。護衛兵士に教えて貰った宿に行き、とりあえず一週間分の宿をとる。そこで身なりを整えいざギルドへ。


 ギルドはそれなりに混んでいた。狩猟ギルドは本当の意味での狩猟による食材・皮や牙等の素材取得だけじゃなく、ゴブリン退治等要請を受けての戦闘員派遣等も行っているらしい。俺のイメージするギルドとほぼ同じだな。

 受付に行き、20歳ほどの明るい受付嬢に村長の紹介状を渡す。

 「フルーツ村に50日ほどの滞在で鹿25頭・兎48羽・鴨16羽・狼3頭……それにゴブリンをエリートを含め9匹討伐ですか。既に銅級LVではないですね」受付嬢は素直に感心してくれる。

 「このクラスならば適性審査も必要ないかと思いますが、一応規則ですので、明日の昼頃にもう一度いらして下さい。担当ギルド員による判定を行わせていただきます」

 「判りました。こちらで用意するものは……」

 「動きやすい服装と、使い慣れている武具があればそれで。細かいものはこちらの別紙に書かれております」

 ……そういえば紙等も普通に流通してるんだよな。アテナの村でもトイレは水洗だったし、井戸もポンプらしきものがあった。他の異世界転生者の知識もあるんだろうな。

 「よし、次はアテナの番だな」

 「え?私も?」

 「2か月俺と一緒に狩りをしてきたし、何匹も獲物も狩っただろう?村長さんの紹介状にもライセンスの件は書いてあったぞ」

 「そこまでの長文は読めないわよ……ってアヤカートは知ってたら教えなさいよ!」

 「君の驚く顔が見たかったんだ」とニヒルな顔で言ったがしこたま怒られた。

 「アテナさんも鹿5頭、兎10羽、鴨4羽……実績は充分ですね。同じく明日適正審査を受けていただきます」

 「審査……上手く出来るかしら?」

 「ギルドの用意する動く的への射的試験や、簡単な設問への解答だけですよ。アヤカート様の教えを受けているのなら問題ないかと」

 「ま、宿屋に行ったら改めて心得を教えてやるよ。では……また明日」

 

 ……ギルドを出て食事をとる。これも俺の世界の調理法らしきものはあるが日本食らしきものはなさそうだな。そろそろ米も食べたくなってきた……といっても農業系チートは持ってないしな。次の世代に託そう。

 アテナが食堂内の人をじーっと見ている。

 「?どうしたんだ?」

 「皆綺麗な服を着てるなーって。村では意識してなかったけど、ちょっと羨ましいかな」

 村にも服は売りに来るが、丈夫さと機能性重視の物が多く、確かに周りの女性の様なスカートすら着ている人すらいなかったな。

 「まぁアテナは着飾らなくても可愛いしな」

 俺の誉め言葉にぼんっ、っと真っ赤になるアテナ、可愛い。

 「まあ少し余裕はあるから、服屋も探そうか」

 「いいの?……嬉しい♪」

 ……ここ2か月ですっかりバカップルだ。

 

 服屋にてアテナのファッションショーを楽しんだ後、宿へと戻り夕食を食べた。先ほどの食堂とそん色のない味だ。一週間滞在するのだし食事が美味しいのは嬉しい。

 食後の団欒を楽しんだ後未成年のアテナを残し、酒飲みと情報収集を兼ねて(という名目で)俺は一人酒場へと出かける。えっちっちーは今日は我慢我慢。

 酒場に行く。エルフの姿は珍しがられたが、皆無でもないらしい。絡まれても緊急回避があるので心配はしていなかったが。

 適当な酒を注文し、バーテンや他の客に今のこの国の状況やら噂話やらを聞き出す。この国は治安はいい方だが他の国への侵略・占領を画策する軍事大国や教会の支配する宗教国家等があるらしい。

 農業林業漁業工業と盛んだが街の外はモンスターもそれなりで、ゴブリンの様に徒党を組むモンスターや盗賊団もいるのでやはり馬車を使わない一人旅はほぼ行われないらしい。

 ……噂ではこの国の貴族の息女が身分を隠してこの街に来ているとか、そういう情報はフラグっぽいから聞きたくなかったな。俺にはアテナがいるし出世欲もハーレム願望もそんなにはない……と思う。


 そして夜間しか開催されていないが、奴隷市なんてものもあるらしい。

 無論不当な奴隷売買等ではなくちゃんと国の認可も受けた、犯罪者や人に害を与えたモンスターの戦闘・労働奴隷らしい。冒険者や商売人の付き人として役に立つ事で犯罪者は刑期が軽くなるし、モンスターにも食事が与えられる。

 ……奴隷という言葉に忌避感はあったが、まぁこの世界に慣れる為に早めにそういうのを知るのも重要かもな、と思い、場所を聞いて行ってみる事にした。


 ……繁華街の人通りの少ない裏通り、その場所にたどり着く。今の所無職の俺が入場出来るかは不安だったが特に制限はないらしい。

 首輪や手枷はされているが、特に不潔という事もない状態だった。聞けば金銭の大小よりも奴隷達の希望を聞いて適切な雇い主の元へ渡しているらしい。まぁじゃないとこんな表立った所で商売など出来ないか。


 戦闘奴隷のトロル、労働奴隷のホビット等色々見ていたが、カーテンで仕切られたドアに

 「性奴隷」

 という心躍る文字が♪


 ……いや今はアテナがいるしうあきじゃないんだだが後学の為に是非とも見学をしなければ決して邪な気持ちで見る訳じゃ

 ……という健全な気持ちを察してくれたのか、案内人の男が俺の手を引いて入場を手伝ってくれた。案内されたならシカタナイネ。


 部屋には扇情的な格好をした、様々な女性たち(一部男性たち)がいた。

 残念ながら俺はロリコンなので、あの頭位ある乳房のお姉さんや、胸は控えめながら手が羽根足が鳥足のハーピィ等は守備範囲外だ。でも場の醸し出す妖艶な雰囲気、怪しげな香りに俺は興奮して楽しんでいた。

 

 その部屋の一角に……牢に入れられた一人の白い髪の少女がいた。

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