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30分程で前方に村らしき所が見えた。周りは高さ3mほどの木製の柵で覆われ、ところどころ松明が立ち、その上に見張り台の様なものが建っている。入り口の門柱は大きな石で出来ている。思ったよりは立派な村だ。
川べりには船着き場があり、数艘の船が留まっている。木材の伐採と運搬で発展した村かな?
見張り台に立っている……俺の今の姿と同じ程度の年齢?の短い黒髪の少女がこちらに気付いた。
……この世界に来て初めて見る人間だが、思わず見惚れてしまうほど、可愛いと思った。
アイドルには興味ないといったが、彼女はそんな下手なアイドルとは比べ物にならない。
くりっとした大きな目と気の強そうな表情、小柄だがすらっとした手足、そして程よい感じの……
「止まれ!そこの者!……見かけない顔だな、ここ、ファンタ村に何をしに来た!」
……彼女に見惚れてボーっとしている俺に、見かけ通りの可愛らしい声で叫んできた。俺は両手を上げ
「俺はアヤカート=オータス。見ての通りエルフだ。敵対の意志はない。旅の途中で一夜の宿を借りに来た。金も少しならある」
といった。少女は他の見張り台の者に手信号で連絡を取った後
「……よし、入って。入り口でその腰のマジックバッグの中身を確認させて貰うが構わないわね?」
……俺は了承し、彼女たちの見分の元バッグの中身を取り出す。
大きな鹿の死体を取り出した時、一瞬ギョッとされるが
「ああ、これは手土産だ。俺は調理出来ないのでな。仕留めたばかりで処理も終わっていないが任せたい」といった。
「こんな大きい鹿を……若く見えても流石エルフね。ありがたくいただくわ」
……どうやら喜んで受け取って貰ったようだ。
「それはいいが、とりあえず何か食べるものと……宿を教えて欲しい」
「食料はすぐ提供します。だがこの村には生憎宿屋はないわ。そうね……今日は私の家に泊まりなさい」
「いいのか?」
「構わないわ。ただし問題を起こしたらこの村総出で抵抗させていただくわよ」
「それは怖いな、よろしく頼む……あんたの名前は?」
「あんたじゃないわ、アテナよ。しばらくよろしくね」
「わかった、アテナ、よろしく」
……思ったより神聖な名前が出てきた。まぁ俺の世界の女神の名前とは関係はないだろうが。
見た感じ活発そうで、この若さで見張り台を任されるくらいだし戦闘能力等も高いのだろう。
背中に背負った弓と腰の剣で武装している。服装は皮の鎧か?RPGの初期装備って感じだな。
皮の鎧の胸部はほとんど盛り上がりがない。そのまま育たないで欲しい。
「……何か邪な視線を感じたのだけど」
「気のせいだ。じゃあ村長に挨拶して、村の端の紫の印のある家に行けばいいんだな?」
「ええ、私はもう少し見張りの仕事があるから……え?判ったわ……今日はこれで上がっていいそうよ。一緒に村長の家に行きましょう」と言われた。
彼女と一緒に村を歩く。人口は判らないが人間を主に色々な人種がいるみたいだ。ほとんどのものが木材の加工に勤しんでいた。
食事を聞くと若い男手はほとんど伐採作業の為村の外に出てて、残りの者は村を守るのに手一杯で、モンスターを狩りに行ける者は不足しているらしい。なので木の実や少量の家畜の他は木材を売った金で食料も仕入れているらしい。
木材は川を使い海まで流された後、近くの漁港に集められ、乾燥後各地の資材として運ばれるらしい。その辺は昔の俺の世界の林業と一緒だな。
「ここが村長の家よ」
狭い村なので歩いて10分ほどで辿り着いた。60歳ほどの村長は最初怪訝そうな顔をしていたが、アテナが鹿の事を言うと喜んでくれた。
村長への挨拶が済み、彼女・アテナの家へと向かう。
「これだけ川も近いのだし、鹿位寄って来てすぐ狩れそうだけどな」
「狩猟が出来る腕があれば、すぐ稼ぎのよい冒険者になってしまうのよ。狩猟出来そうな若者は今は私と、見張り台に立つ数人と、河口にある木材問屋から出向している兵士数名が伐採作業の護衛をしているだけね。貴方も、今は狩人ライセンスは持ってないようだけど……エルフの里から出稼ぎに来たのでしょう?」
「いや……そうだな、まずはこの世界の色々なものを見てみたいし、その過程でそのライセンスだかも習得するかもしれない。それより君は?見た限りまだ若そうだし」
「私は身体の弱い妹がいるし、簡単には出ていけないわ……死んだ両親の育った村だしね」
そうこういう内に彼女の家に着いた。質素だがしっかりとした家だ。雑草も割と綺麗に取られていて几帳面な性格みたいだ。
彼女を一回り小さくしたような、これまた可愛い妹さんが出迎えてくれる。年齢は一桁だろうか?……もう1,2年もすればストライクゾーンだが、流石に手を出す訳にはいかない、無念!
「こ、こんにちわ。るなっていいます。おにいちゃん、よろしくおねがいします」
……ずっきゅうううううううううん!!
「……さっきから邪な視線を感じるけど、本当に大丈夫でしょうね?」
「だ、大丈夫だ。三次元ロリには手を出さない」
「さんじげんろり?何それ呪文?」
……大分興奮度メーターが振り切れそうになったが、何とか我慢して部屋の中の椅子に座った。
しばらく待って、アテナが食事の準備をしてくれる。
その間にルナタンゲフン!ルナちゃんとお話しタイムになった……やべえ、幼女に興奮はするが、一体何を話していいかとか想像もつかない。
「えーと、おにいちゃんのなまえは?なにをしているひと?」
……ルナちゃんがリードしてくれた。幼女にリードされる俺……一向に構わんっ!
「あ、ああ、アヤカート=オータスだ。エルフの狩人で、今世界を回る旅をしている。まだ始めたばかりだがな」本当は無職だけどな。
「ふーん、じゃあおにいちゃんのまちのはまなしをきかせて♪」
「ああ、えーと……」
……一応ここに来るまでに考えておいた設定を聞かせてあげる。都合の悪い所は昔事故に遭って記憶が曖昧になってると答えた。アテナも調理しつつ「大変ね」とか相槌を打ってくる。
そのうちいい匂いがしてきたので褒めると「あまり期待しないでよ、母さんが亡くなってから始めた料理だし」と謙遜してくる。ルナちゃんが「おねえちゃんのりょうりはとてもおいしいよ♪」と相槌を打ってくる。いい姉妹だ。
さ、完成したようで食卓に料理が並べられた。パンは堅かったが思ったよりは異世界料理のテンプレにそぐわず美味しかった。ただ……
「やはり肉が少ないのはアレだな。ルナちゃんもこれでは滋養が付くまい」
「肉は高いからね。先ほどアヤカートが獲ってきてくれた鹿一頭でも、ここの住人全員が消費する量の1週間分にはなるわ。元冒険者の狩人が1人いるけど最近身体を壊して狩りに出れないのよ」
アテナは、じっとこちらを見てくる……
「ね、ねえ?村長からも依頼が来るかもだけど、もしよかったら……滞在してる間何匹か鹿とかを狩って貰いたいのだけど……」
「ああ、いいぞ?」
「こんな村だしあまりお金も出せ……って、いいの?言いかけたけどあまりお金は出せないと思うわよ?」
「別に明確な目的が合って旅に出ている訳ではない。一宿一晩の……まだ出会って2時間ほどだが、宿賃代わりに狩ってみるよ。ただ弓のLVはさほど高くないし期待はするなよ」
「あ、ありがとう!早速村長に行って正式な依頼に……」
「いや、お金等にも困っていないし別にいい。俺はまだライセンスも持ってないしな。じゃあ後で、その元冒険者の狩人に注意点を聞きに行きたい」
……ルナちゃんがこっちを見て「おにく、たっぷりたべられるの?」と言ってくる。嗚呼、こんな羨望の眼差しで見られたら興奮しちゃうじゃないか(ズキューン)!
※とりあえずこの辺で。
数日に1回投稿出来る様頑張ります。
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