私達は白色だった。
具丼
第1話 フィットニアとキンセンカ
私と成美は同じ地元、同じ小学校、中学校、高校と、今までずっと一緒だった。いつも私は成美と一緒に居て、周りの皆も
「2人共仲良いねー!」
といつも言ってくれていた。成美は控えめに言っても可愛かった。成績も優秀で親からもなんでも与えてもらってた。それに比べ私はどれだけ努力しても成美のように可愛くはなれなかったし、賢くもなれなかった。親は
「まぁ成美ちゃんと比べてもしょーがないわよ、あんたはあんた、それで十分じゃない」
ある日成美に聞いた。
「成美ー、誕生日プレゼント何欲しいー?」
成美は言った。
「別に欲しいもの無いしー、一緒に駅前のドーナツ屋さんの食べ放題行こう!」
私は羨ましかった、どうして欲しいものがないと言えるのか、そこが私と成美との差なのだと深く落ち込んだのを覚えている。
今、私と成美は高校三年生で受験シーズン真っ只中だが、成美は学校からの推薦を貰い、面接だけらしい。そのため成美は付きっきりで私に勉強を教えてくれている。
今日も夏休みにも関わらず空いている学校の自習室で一緒に勉強する予定だ。茹だるような暑さの中、学校に向かう坂道の途中後ろからドンッと衝撃を受け振り返ると案の定そこには成美がいた。
「すずちゃんー! 今日もちゃんと来れて偉いねぇー! おーよちよちよちよちよち」
と言いながら頭を撫でてくる成美を私は華麗に避けながら言った。
「こっちこそ付き合わせてごめんねー。いつも悪いねー」
「いや、私も家に居なくていいから楽だよ!
ほら! 早く行こう!」
そう言って彼女は私の手を引いた。
「グァーーー! ちゅかれたよぉーーー!」
そう言って私は成美にもたれかかった。
「すずちゃん今日はめっちゃ頑張ったねぇ!
ご褒美に駅前のサーティワンでアイス食べよ!」
そうして私達はサーティワンに向かい歩き始めた。
「成美ってさ、あの有名な大学行くんだよな?」
「うん?そうだよー、ちょっと遠いけどねー。しばらく会えなくなるかもだしー」
「そうかー......」
ここで暑さが私の頭を溶かしたのか、はたまた勉強のし過ぎで頭が蕩けたのか私はつい言ってしまった。
「良いよねー成美って。顔も可愛いし、賢いし、親も優しいし、ほんっと羨ましいよー」
そう言った時成美がどんな顔をしていたか分からなかったが私は続けた。
「マジで親ガチャ大当たりだよねぇー」
その時成美が言った。私はその言葉を薄らとしか覚えていない。
「そうだよね」
成美はそう言うと続けて言った。
「ごめん急用思い出しちゃった! すぐ帰らなきゃ! サーティワンはまた明日ね! ほんっとごめん! 勉強サボっちゃダメだよ!」
「えっ! そんな急に! ごめん私言い過ぎちゃっ」
私が言い終わる前に既に成美は走り出していた。
私の見間違えでなければ成美は泣いていた。
次の日成美は自習室に来なかった。私は反省し、次会った時謝ろうと思いながら家に帰った。
お母さんが泣いていた。
私は嫌な予感がしたがドラマじゃあるまいし、と思い母に聞いた。
「成美ちゃんが......自殺したって......」
私はショックで息が出来なかった。どうして、なんで、成美が? そんなわけない。なんで、なんで、なんで、なんで?
葬式は次の日に行われた。
電車に飛び込んだらしく成美の原型を留めた部位は腕しか無かったらしい。私は泣いた。私のせいだ。私があんなこと言ったから。ひたすら自分を責めた。
お通夜は親族だけでするらしく私は帰ろうとした。
そのとき成美のお母さんに呼び止められた。どうやら成美は遺書を遺していたらしく、それ渡してくれた。
私は遺書を読めなかった。読むと成美が死んだという事実を受け止めてしまい、自分の中から成美が消えてしまいそうだったから。
私は徐々に学校に行けなくなり、なんとか受験できるだけの出席だけ行った。
学校に行かない間はいつも勉強か成美のことを考えていた。
なんで自殺なんかしたのか、なんで、なんで、なんで......
答えは何時まで経っても見つからなかった。そうして私は受験を乗り越え、なんとかギリギリで志望校に合格した。
そうして私は私の中の成美との別れを決意した。私は成美の墓前で合格報告をし、遺書の封を開けた。
私達は白色だった。 具丼 @788888tako
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