第32話 海斗、動く

海斗「原動力と言われても実感がない。それで動いてみたいのだがどうだろうか」

ゲル「動くってどうするんだ」

海斗「排除に動けないかということだ」

ギル「お前、悪魔に魂を売る気か」

海斗「売る気はない。もう悠長なことは言えないだろう」

ゲル「お前たち何の話をしているんだ、俺様にもわかるように頼むよ」

ギル「こいつ、法で裁けぬ悪を始末すると言っているんだ」

ゲル「どこかで聞いた台詞だなぁ」

海斗「危なくなったら身を引くさ」

ゲル「狡い気がするが、で、どうするんだ」

海斗「ギル、魂界の者に繋ぎを付けてくれ」

ギル「本当にやるのか」

海斗「折角の死神手帳を使わない手はないからな」

ゲル「ああ、イライラする。俺に分かるように…」

ギル「分かった分かった。こいつ強行突破で事を納めるつもりだ」

ゲル「強行突破?何をするんだ」

海斗「目に余る者を排除するってことだ」

ゲル「やっちまうのか」

海斗「やりはしないが結果は同じだろうな。脅しは必要だろう。平和ボケのこの国に

   は」

ゲル「闇の処刑人か。閻魔大王が許すのか危険が多すぎないか」

海斗「処刑はしない。考える時間を与えるだけさ」

ギル「分かった。手配する」

海斗「頼んだ」


 ギルは海斗の考えを魂界の者に伝えた。人の善悪を監視する和御魂・ギルは海斗の考えを読み取っていた。日本人でありながら母国を陥れる思考に侵されている者を構成させる機会を与えるための行動だと読み取った。洗脳されたものがその洗脳を解かれるのは死と背中合わせの環境で誰の手も借りず現実を見直せるかの問題だ。そう海斗の言う強硬とは強制的にその環境を与え、自らが改心できるか否かをその個人に任せようというものだった。改心できなければ死が待っているだろう。そこまで追い込まなければ改心などありえないと考えたのだ。ゲルは海斗の脳内で描かれた光景を具体化するために必要な人材を探すように魂界の者に伝えた。魂界の者から思いがけない返答が返ってきた。魂界の者が関わった米国の大統領選での敗北原因を関係者の選別だと結論づけていた。

 何事にも動くには行動力と資金が必要だ。親中議員が経済界を巻き込んで訪中を考えていた際、それに憤慨する者も多いのを探り当てていた。魂界の者はその対象者に既に憑依している者もいた。共に生きる本来の憑依ではなくコントロールを目的としたものだった。

 憑依した者が即座に動いた。憤慨の布石は幾つも打ってあった。憑依されたものは救世主として海斗を夢を通して脳内に刷り込まされた。海斗は魂界の者から賛同者に合うように要請された。その際、現実味を欠くように変装を支持された。それは意外なものだった。


ギル「魂界の者からの要請を伝える。行動力と資金源を得るため資産家や会社経営者

   が選出された。海斗は絵夢の狂言回しの役を担ってもらう。その際の変装はピ

   エロだ。骨格や目の感覚などを誤魔化せる特殊メイクを行うようにのことだ。

   声はボイスチェンジャーを使えばいい。海斗が描いた絵夢を話せばいい。会う

   のは資産家・企業家・政治家の代表の三人だ」

海斗「分かった」

ギル「じゃぁ、行くぜ」

海斗「行くって…」


 海斗が話し終える前にギルの法術によって海斗は原子化され、再び自分の姿を確認できたのは暗い部屋に設置された大きな円卓の中心部だった。そこには三人の男が座っていたのが確認できたが顔などは確認できなかった。強い光が海斗を神々しく照らしていた。そこに一人の女性が遅れて入ってきた。ギルからテレパシーで医師だと告げられた。ギルに支持され海斗は唐突に且つ端的に話し始めた。


海斗 「目障りな可笑しな輩を一掃する。対象者には選択の余地を残す。改心できな

    ければ自らの人生を諦めてもらう。具体的には無人島に建設現場で用いられ

    る従事者用の二階建てのプレハブハウスを設置。一部屋は死刑囚の独房と同

    じでいい。まずは百人の収容用意。見せかけも含めての部屋数だ。そこに拉

    致した者を放置し、サバイバルを強制する。お互い自由に接することができ

    る環境を与える。強制的に考えを直させるのは好まない。同じ考えを持った

    者を突き合わせ矛盾点や改革点を探らせる。不平不満だけでは死が待つのみ

    の極限状態に彼らを置く。あとは彼らに任せる。生死を掛けたサバイバルゲ

    ームを体験させ、狂い咲きしたお花畑を消滅させ、建設的な土壌を自ら切り

    開いてもらう。自活できるように半年から一年は物資を定期的に供給するが

    明確に期限を切り、その後は一切、供給しない。それで彼らがどう動くかを

    観察する。警察は政治家に抑えさせる。神隠しだ。それをあなた方にお願い

    する」

企業家「改心しなければ死が待つのみか」

海斗 「自業自得だ」

資産家「消せばいいんじゃないか、その方が早く、経費も掛からない」

海斗 「単なる粛清では意味がない。拉致されていない者への恐怖心をたきつける必

    要がある。改心すればスパイとして働かさせる。毒を以て毒を制すだ」

政治家「遺体が上がらなければ事件化できないからな」

資産家「行くへ不明者にするには有名人過ぎないか」

海斗 「定期的か何らかの得を積めば連絡させる。それで生存を関係者に伝える」

企業家「危なくないか」

海斗 「場所を特定するのは組織でなければ難しいから心配はいらない。携帯電話は

    海外で手に入れたものを使うかSIMカードをその都度、変えてもいい」

資産家「サバイバルの意味は」

海斗 「生きるとはを考えさせる。依存ではなく独自でな」

政治家「面白い彼らがどう変わっていくのか変わらないのか。その結果次第では可笑

    しな輩の更生が可能なのか否かを図れるな」

海斗 「更生?そんなものを求めていない。静かにできるかできないかだ。この件に

    関して実働部隊の人材への報酬もお願いしたい。幽霊社員や遊軍でも設けて

    捻出して頂きたい」

企業家「裏金か、任せておけ。税務署を抑えてくれよ政治家さん」

政治家「任せておけ」


 企業家・資産家は仲間に資金調達を募り、無人島を手に入れ、そこにプレハブを建てた。プレハブは森林の中に作られ、衛星写真からも分かり難いように天には木々にネットを張り自衛隊のカモフラージュのような仕様にしてあった。安易な物だけに容易には時間を要しなかった。























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